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Sony Dealer Convention 2008 リポート Sountina篇 [Sony・Audio]

Sony Dealer Convention 2008リポート。第一回は今年の6月に発売になった、無指向性アクティブスピーカー“Sountina”の開発者セミナー篇をお送りします。

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このセミナーで説明を担当されたのが、Sony オーディオ事業本部 オーディオ開発・技術部門 技術1部1課の鈴木伸和氏。

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この鈴木氏こそがサウンティーナの生みの親で、氏がオーディオエンジニアであると同時にインテリア好きであったことが、「インテリアに溶け込むような今までに無いスピーカー」というサウンティーナ誕生の原点となっています。

Sountina(サウンティーナ)という名前の由来は、“Sound(音)”と“Fountain(泉)”を掛け合わせた造語で、これの語尾をイタリア語などで女性名詞を表す「-a(ア)」とすることで、“女性的な響き”を意識したんだそうです(ちなみに企画段階で最初に提案された製品名がこの「サウンティーナ」で、その後いくつもの案が出たものの、結局は最初のサウンティーナが最も良いという結論になったとのこと)。

その名の通り、製品コンセプトは「上質な音が湧き出てくる泉」。

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ちゃんとしたHi-Fiオーディオセットを組んで、正面切って「聴くぞ~」と身構えて音楽を聴くスタイルではなく、BGMのようにゆったりと音楽に満たされている空間を作り出し、リラックスして楽しむためのスピーカーとして生み出されたのです。

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Sountinaのポイントは三つ。

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360度均一に音が拡がることで特定の「リスニングポイント」を作らず、その空間のどこにいても同じように音楽が楽しめる、ステレオでもモノラルでもない「サークルサウンドステージ」という音場概念。

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そしてこのサークルサウンドステージを実現するためにサウンティーナは、高域を鳴らすトゥイータが、約1mの有機ガラス(アクリル)の透明な管という特異な形をしているのですが、それを振動させる方向と実際に音が出る方向が垂直になっているという「バーティカルドライブテクノロジー」

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存在自体が美しく、3色に光るイルミネーションなど、音の泉にふさわしい「こだわりのデザイン」

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といったプレゼンテーションを受けて、まずはとにかく試聴です。サウンティーナにはSonyのSCD-X501が接続され、バイオリンの曲が流れます。

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サウンティーナは形式的にはモノラルスピーカーなので、演奏されている各楽器の位置関係など音の空間再現が苦手ですが、その分聴く人間が部屋のどのポジションにいても同じように音が響いてくるので、必ずしもリスナーがスピーカーと正対する必要がありません。

このセミナーでも僕の左斜め前にサウンティーナがある状態でしたが、通常のオーディオ機器のようにそちらに顔を向けなくてもあまり違和感なく音楽を聴くことが出来ました。

音の傾向としては「中高域の音再現が少し苦手?」という印象。特定の音域で高音部の余韻がスッと自然に消えず、微小な響きが切り落とされたような固い音をしていて、ちょっとバイオリンが安っぽい音になったかもというのが正直な感想です。

ただサウンティーナの「長さを持った線状の物体を加振器で振るわせる」という構造は、弦楽器の音発生原理に近いものがあるので、この後聴かせてもらったゴンチチのギターでは、非常に再現性の高い良い音を奏でていました。

で、この線状(サウンティーナでは筒状)の物体が音源となる「線音源」がもたらすもう一つの恩恵が、通常のコーン型ダイナミックスピーカーのような「点音源」とちがって、スピーカーから離れても音が減衰しにくく、垂直方向のリスニングポジションも広いので、立っても座っても同じように音が聴こえるというところにあります。

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この後セミナーでは「もっと近くで見てもいいですよ」と言われ、参加者みんなでかじりつくように写真を撮っていたのですが、

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近くで写真を撮っていても、離れて音を聞いても同じような音量で聴こえてくるのは、とても不思議な感覚でした。

 

サウンティーナの心臓部、独立して有機ガラス管を振動させている四台の強力な加振器は、真ん中の四本の柱の中にあります。

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このように加振器は音の出る方向に対して垂直に取り付けれており、有機ガラス管を横ではなく縦に振動させています。これは言わば地震のP波(縦波)のようなもので、S波(横波)に比べて波の伝播速度が速いので、管の上下で波のズレ無く全体を均一に振動させるためにこの駆動方向になったのだと思われます。

最初にこのサウンティーナの構造を知ったときは、「サウンティーナのトゥイータはガラスの上端面から音が出ているのか?」と思ったのですが

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鈴木氏が名を連ねるサウンティーナの元アイデアと思われるSonyの特許を読んでみると、管を薄く軽く作ることで、内部を音波が通過するときに管が横方向に加振されるようになるので、縦方向に駆動しながら横方向に音が出る「バーティカルドライブテクノロジー」が成立するんだそうです。ここらへんちゃんと勉強してからセミナーに臨めばよかった…orz

 

そしてこの特許にもあるとおり、サウンティーナのガラス管は音を出すトゥイータであると同時に共鳴管の役割も果たしていて、先ほどのギターのような弦楽器だけでなく管楽器の音再現性にも優れているとのことで、今度はサックスを聴かせてもらいます。

なるほど、サックスの微妙な空気感も細やかに響かせていて良い感じ。いわゆるオーディオ機器とはまたちょっと違った響き重視の音に感じました。

 

サウンティーナをオーディオ機器的に分類すると、管状のトゥイータだけでなく、加振器に囲まれるように中央下向きにミッドレンジ、本体下部に同じく下向きにウーファーがついているので、いわゆる「3Wayスピーカー」にあたるわけですが、

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普通のスピーカーとは構造が異なるため、各スピーカーのクロスオーバー周波数は単純には決まっていないそうです。ステレオ音声信号で入ってくる入力機器の左右の音をミックスして、サウンティーナ一本で広がりのある音を作り出す役割を果たしている内蔵DSPが、どの音をどのスピーカーで鳴らすかをコントロールしているとのことでした。

 

三つのポイントの最後「デザイン」ですが、そもそもトゥイータに有機ガラス管を採用したのも、「インテリアに溶け込むデザインとするためにトゥイータに透明な素材を使うこと」がスタート地点としてあるため、金属製の素材を使うことなどは考えず、透明な素材の中で最も音がよかったのが有機ガラス(アクリル)だったので採用したとのことでした。

デザイン上はあまり目立たないウーファーとアンプが収められたベース部分は、金属の筐体に本革のスリーブがつけられていて、製品版はその黒色のスリーブか地の色であるシルバーの二つの表情で楽しむようになっています。

しかしさすがは特別なセミナー、こんな試作品を見せてもらえました。

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本革は本革でも赤のもの。

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こちらは漆塗りなんだそうです。

せっかく100万円もする製品なんですし、こういうプレミアムっぽいスリーブもオプションにあると楽しそうですね。実際ホールとかロビーとかの業務用用途での引き合いが強い製品でもありますから、設置される場所の雰囲気に合わせて顧客側がオーダー出来たりすると良いかもしれません。

 

以上サウンティーナの開発者セミナーの様子をお伝えしましたが、生みの親である鈴木氏のこだわり(インテリア好き?)は相当なもので、「とにかくデザインでも音でもインテリアになじむ、今までに無いスピーカーを作りたかったんだ。」という想いから出来た製品であることがよくわかりました。

100万円という一般人にはなかなか手の出ない価格のスピーカーではありますが、こういうものが社内で消えることなく、市販に到達するというのはSonyならではだと思います。この技術を活かして、普通の人にも手の届く新しいスピーカーが出てくるときが楽しみです。

Dealer Conventionの本会場では、照明にもなる「響-HIBIKI-」「奏-KANADE-」といった単純に小さくしただけではないサウンティーナが参考展示されていたので、すでにそっちのほうの研究開発も進んでいるのかも。


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コメント 2

Riever

クロスオーバー周波数が固定でない、というのがなかなか面白いですね。
by Riever (2008-09-17 09:21) 

かつぽん

なるほどねぇ、やっと原理がおぼろげながらも
わかったような気がします!!
ありがとうございましたm(__)m

コレ・・・民生用というか庶民向けに
コンパクト&低コスト化した物を出すのは難しいのですかねぇ?
是非とも自宅に置いてみたいと思う人は
僕だけじゃないはずだと思うのですが・・・
by かつぽん (2008-09-17 18:01) 

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