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iPhoneの登場は新時代の幕開けなのか [携帯電話・iPhone]

今年に入ってから8回にわたって開催されてきた、総務省の「モバイルビジネス研究会」の、最終的な結論と言っていい“報告書案”がまとまりました。

モバイルビジネス研究会報告書 -オープン型モバイルビジネス環境の実現に向けて- (PDF)

常々「インセンティブ販売モデルの廃止」「キャリアによるメーカーからの端末全量買い取りの禁止」「メーカーによる端末販売」「SIMロック解除」「iモードメールの廃止とMMSへの移行」といった事の実現を訴えている僕が、この報告書に対してどんな反応をするのか、期待されている読者様もいらっしゃると思いますが(^^;)、まだちょっと僕の中で考えがまとまっていないので、しばらくお待ちください。

今のところ「ちょっと手ぬるいし、問題の根本解決にはならんかな。」といった感想です。

まぁ変えていく時期の問題はともかく、日本の携帯電話市場も、キャリアの手のひらでユーザーが踊らされてしまっているクローズドな状況から、ユーザーが自分の好きなモノを選択する権利を持った、オープンな状況にすべきだ、という方向に進み出したのは良いことだと思います。

 

ところが海の向こうでは、日本とはまた異なったカタチのクローズドなビジネスが、まもなく始まろうとしています。

各種メディアで報道されていますが、アメリカで29日に発売を迎える、iPhoneの料金プランとアクティべーション方法がビデオで公開されています。

iPhone Activation & Sync (米Apple)

初公開時からすでに明言されていましたが、iPhoneは4GBが499ドル、8GBが599ドルで発売され、利用キャリアはAT&T(旧Cingular)限定で2年契約が必須。AT&Tが発表したプレスリリースによると、プランは59.99ドル/月で無料通話450分込み、79.99ドル/月で無料通話900分込み、99.99ドル/月で無料通話1350分込みというiPhone用の3プランが用意され、データ通信(e-mail,Web)は3プランとも使い放題、200通のSMS料金込み、携帯電話間の通話し放題といった内容になるようです。

iPhoneの電話機部分はGSM/GPRSという第二世代携帯電話なため、どこまでデータ通信が快適かはわかりませんが、日本の三馬鹿キャリアの料金に比べると、良心的かなと思えます(ウィルコムの料金体系に近い?)。

問題はアクティべーション。

ユーザーはiPhoneを購入したら、iTunes7.3以降をインストールしてあるPCと接続し、そこで料金プランやオプションサービスの選択、支払いクレジットカードの登録などを行って、初めて利用可能となります。そしてこのアクティべーション時にアメリカの社会保険番号も要求されます。

端末を購入して、家に持って帰ってから、ユーザーがPCでキャリアとの契約作業や、料金プランの選択を行うというだけでもかなり特異な方法ですが、このやり方のためiPhoneは、

最初のアクティべーションが完了しない限り、全ての機能が動かない

というロックがかけられているのです。

それもそのはず、iPhoneの4GB/499ドル、8GB/599ドルという価格は、明らかに「2年に及ぶ通信料金からの収入を前提にした値引き価格」であり、もしロックをかけないと、端末を買った人がAT&Tと契約せずに、「画面が大きくて、Wi-Fi&Bluetoothを搭載していて、ネットやメールも出来るiPod」として使うことが十分考えられ、これでは利益にならないわけです。

ちょうど日本のワンセグ携帯やウォークマン携帯が、解約される(SIMカードが抜かれる)と肝心の機能が動かなくなるのと同じ考え方といえるでしょう。

ですから仮に電話として使えなくてもいいから、iPhoneを手に入れて日本で使いたいという酔狂な人がいたとしても、誰かアメリカ人(社会保険番号を持った人)に、購入後にアクティべーションをしてもらってから、解約白ロム化したものを送ってもらいでもしない限り、動くことさえないということになります(解約後でも携帯電話以外の機能が動くかは不明)。

購入費用と2年以内の解約時の違約金等を考えると、白ロムは10万円以上で各種ネットオークションに出回るのかもしれません。

 

まぁロックの是非はともかく、iPhoneのこのビジネスモデルの凄いところは、「端末メーカー(Apple)が端末を安値で販売し、キャリア(AT&T)からその分通信料金のキックバックをもらう。」という、今までの携帯電話業界では考えられなかったお金の動きがあることです。

こんな強気なビジネスが出来るのも、AppleとiPodのブランド力と市場支配力のおかげと言えますが、「キャリアが全てを支配する」という日本型の垂直統合ビジネスモデルとはまたひと味違った、「メーカーが全てを支配する(何せ音楽やビデオサービスを提供するのもiTunes Storeなわけで…)」というApple型の垂直統合ビジネスモデルの出現は、携帯電話の新時代の幕開けなのか、それとも日本のような硬直化したつまらん世界を生み出してしまうのか、これを世界はどう受け止めるか注目したいところです。

僕としては、端末は端末、回線は回線、そのうえで活用するサービスはサービス、と水平分業されたうえで、自分の好きなものを組み合わせることが出来るという方が、人類の多種多様なアイデアを吸収し、より面白いものを生み出していく原動力になる気がしているのですが、結局は従来の携帯電話はWindows、iPhoneはMacといった感じで、「ある一定の存在感はあるが、市場の主流にはなり得ない」というカタチで併存するような結果になるのかなぁ。


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コメント 8

iPhoneの初期ロックは、そのうち誰かが解除する(^^ゞ のでしょうが、このビジネスモデルにDoCoMoが乗れるとは思えませんね。
開発力はあるので、iTunesでのアクティベーションも不可能ではないと思いますけど。
契約数確保のために、美味しい材料だからコストをかけるかな?ショップ店頭でアクティベーションとか。

M1000/hTc Z方式は・・・
高機能とはいえ、事業者ロック&BT制限のかけられた10万円のiPodなんて、私は買いません。(-_-;)
by (2007-06-28 10:28) 

かつぽん

どこまでiPodの殿様商売が通用するんでしょうね?
こういうやり方ってアメリカ人は嫌いな筈なんだけどなぁ・・・

それはそうと、iPhoneのBluetoothは
A2DPには対応しないらしいですね。
ハンズフリーのためだけのBluetoothかよと小1時間・・・
by かつぽん (2007-06-28 14:40) 

店員佐藤

うーん、これって日本のビジネスモデルに
近い形ってことなんですよね? 違うのかな?
by 店員佐藤 (2007-07-02 17:46) 

Riever

iPhoneの登場でこの業界はどうなるのか、気になるところです。
まあ「日本」の業界に直接影響しないですけどね・・・。
自分たちの利益を守るための「鎖国」は感心できないです。
by Riever (2007-07-06 20:28) 

akoustam

>kotatoさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

仮に日本で出てもAppleに載せられて、利益は全部吸い取られるような構造になりそうですね。逆に言えば、日本のメーカーもこういう手に出て、儲けすぎの三馬鹿キャリアから、もうちょっと利益分捕れるといいんですけどね。
by akoustam (2007-08-06 00:16) 

akoustam

>かつぽんさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

そこらへん僕はやっぱり「iPhoneはスマートな電話ではあるが、スマートフォンではない」となっちゃうんですよね。もう少し柔軟な設計になっていればいいのに。
by akoustam (2007-08-06 00:17) 

akoustam

>店員佐藤さん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

これは日本とは違うビジネスモデルですね。ここまでメーカーに主導権を握られて、キャリアは回線を提供するだけってのは、世界的にも珍しいカタチだと思います。
by akoustam (2007-08-06 00:19) 

akoustam

>Rieverさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

いつもでも鎖国していれば嵐が過ぎ去ると思っているのが、いただけないですよね。明治維新もそうですが、やるまえから白旗あげて「開国しないで~」とお願いしてまわっている旧世代の人間は排除し、開国して討って出るという選択肢をとるべきだと思いますよ。
by akoustam (2007-08-06 00:23) 

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