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PC発想のものづくり [Sony・Cyber-shot]

既報の通り、Cyber-shotに新シリーズCyber-shot G1が加わることが発表されました。

デジタルスチルカメラ Cyber-shot DSC-G1

DSC-G1 デジタルスチルカメラ (SonyStyle)

2月28日にフルモデルチェンジが発表されたCyber-shotのメインストリーム、Cyber-shot T,W,Hの各シリーズですが、その日の記事に書いたとおり、僕としては、新しさが感じられないことや、コンセプトのちぐはぐささから、あまり高い評価はあたえませんでした。

しかし市場には好感を持って迎えられたようで、T100あたりは好調なスタートを切ったようです。

それから一週間、あえて同時発表はせず、アメリカのPMA07に合わせて登場してきたG1ですが、なぜわざわざ発表をずらしたのか、機能を仔細に見ていくうちになんとなくわかってきました。今日はこのCyber-shotの中でも特異な存在となりそうなG1を詳しく見ていきましょう。

1. 大容量約2GBの内蔵メモリー搭載

最近のCyber-shotは60MB前後の小容量内蔵メモリを持っていましたが、G1の内蔵メモリは驚異の2GB!、メモリースティックの価格が下落している中、なぜこのような大容量メモリを積んできたのか、それはG1が半分“カメラ”であると同時に、半分“フォトビューワー”だからに他なりません。

そのコンセプトは筐体のギミックにも表れており、

再生時には筐体が左右に縮んで操作パネルが隠れ、背面は液晶のみになるという過去のCyber-shotには見られなかった機構が採用されています。

2GBもの容量があると、VGAサイズのJPEG画像なら保存枚数は約20,000枚。その人の持っているすべての写真が入れて持ち歩けるようにしよう、そうしたら新しい写真の楽しみ方が生まれるのではという狙いがあるようです。

このコンセプトは音楽の世界でいうところのNetwork Walkman & iPodに通じるものがあり、Cyber-shot G1がどこまでデジカメの世界を広げてくれるか、楽しみなところでもあります。

G1で撮った写真だけでなく、過去に撮った写真や、別のデジカメで撮った写真もG1に取り込むためのソフトが「Album Editor」、このソフトでPC内の画像を自動的にVGAサイズにリサイズして転送することができます。

またG1では保存した写真にラベルやコメントをつけておく機能があり、

この分類のためのラベルの種類もAlbum Editorで50種まで増やすことが出来ます。

2. 見たい写真をすぐに探し出す、便利な管理機能と検索機能

20,000枚もの写真の中から目的の写真を探すとなると、単純な検索ではかなりの骨折り作業になることが予想されます。そこでSonyは面白い検索方法を実装してきました。

まずは写真の撮影時間や撮影頻度を解析して、イベントがあったと思われる時間帯ごとに写真を自動でグループ分けする「おまかせ管理機能」

そこからさらに写真を絞り込んでいくのに使われるのが、最新のCyber-shotに搭載された画像解析機能です。

Tシリーズなどで使われる顔検出機能「顔キメ」は、撮影するときに画像解析をかけて顔を探しだし、顔に最適化したフォーカス、露出、ホワイトバランス等を自動で決めてくれることで、ポートレートが綺麗に撮れるという機能ですが、この画像解析機能をAlbum Editorに持たせ、PCパワーを活かして強力な解析させることで、「画像の中の人の数を数えて、“ポートレート”“集合写真”“風景、その他”に分類する」とか、「なんとなく覚えている写真の色味だけで画像を絞り込む“色認識”」とか、「選択された画像と似ている画像を検索する“類似画像検索”」といった検索に必要な情報を画像に埋め込むことが出来るようになっています。

高度な技術を面白いことに使う、いかにもSonyらしい機能ですね。

3. 世界初、写真画質の3.5型「エクストラファイン液晶」を搭載

携帯電話の世界では着実に浸透しつつあるVGA解像度の液晶ですが、それをCyber-shotに持ってきてしまいました。しかもデジカメやビデオカメラにありがちなハニカム配列ではなく、PCや携帯電話では当たり前のストライプ配列を採用したので、メニューなどの細かい文字などがきっちりと表示されるようになっています。

4.“サイバーショット”として初めて無線LAN(Wi-Fi)搭載

今までBluetoothを内蔵したCyber-shotはありましたが、G1は初のWi-Fi搭載機となりました。

このWi-Fiをどう使うか、一つ目がホームネットワークの標準規格DLNAを使用した家庭内画像配信。

G1内の画像をケーブルやクレードルで接続することなく、VAIOやBRAVIAで閲覧することが出来るようになります。

二つ目が、画像共有撮影“コラボショット”

最大4台までのG1と相互接続して、撮影と同時に他のG1に自動的に画像を転送し、保存できる機能です。この機能を使えば、お父さんみんなでCyber-shot G1を買い込んで、ゴルフ場で一斉撮影してあらゆる角度からスイングフォームチェックとか出来ますね(発想がオヤジくさい?(^^;))。

三つ目がケーブル接続することなく画像を別のG1に送信できる“ピクチャーギフト”

今のところ、複数のG1が一堂に会するというのはかなりレアなシチュエーションなので、なかなかその魅力は伝わりにくいと思いますが、これからSonyのデジカメが全て無線LAN搭載になったら、かなり面白いことになりそうです。今後はCyber-shotへの標準搭載を願いたい機能ですね。

5. MP3音楽も保存可能。お気に入りの写真に音楽とエフェクトをつけて、スライドショー再生が楽しめる「音フォト(音楽つきスライドショー)」搭載

最近Sonyがやたらと力を入れている「音フォト」ですが、G1はなんと側面に普通の3.5φステレオミニプラグを装備してしまいました。写真にあるとおりMDR-EX90SLすらつけることが出来ます(笑)。

BGMに使えるのはMP3ファイルですが、2GBの内蔵メモリに保存するので、実質的には2GBのMP3プレーヤー機能が合体したカメラということになります。

 

このように周辺機能はSonyらしい新しい提案のあるCyber-shot G1ですが、カメラとしては1/2.5インチ600万画素CCD、ISO感度は1000が最高、35mm換算で38-114mm/F3.5-4.3のレンズ、画像エンジンBIONZは非搭載、と明らかに一世代前のTシリーズの使いまわしになってしまっています。

せっかくの豊富な機能も、肝心要のカメラ性能がこれでは、色あせて見えてしまうので、次のG2は、カメラとしてまずは高画質で撮れることを目指して欲しいところです。

 

そんなこんなでこのCyber-shot G1を見ていくと、どうも今までのCyber-shot部隊とは毛色の違う発想で出来たカメラだなということがわかります。

それもそのはず、このG1は開発の中心メンバーがCyber-shot部隊ではなく、旧VAIO部隊が中心になって開発したものでした。

Cyber-shot G1開発者インタビュー

特に設計プロジェクトリーダーの安形顕一氏なんて、あのVAIO U/VAIO type U(キーボードが別体の初代typeU)の開発者じゃないですか!最近VAIO関連で見かけないなぁと思っていたら、いつのまにやらDI事業本部に異動されていたんですね。

でもカメラを作らせてもやっぱり安形氏らしいというか、この人のアイデアや設計力は全く衰えてらっしゃらないようで、すばらしいですね。

この開発者インタビューを見ていくと、いかにG1がPCの発想で作られたかがわかります。

カメラとしての基礎となる部分はCyber-shot T9を使いまわし、そこにいかにガジェット好きを楽しませるような機能を盛り込むか、G1で実現している自由な発想は、旧来のカメラに縛られている(そのわりにカメラ性能は軽視している)Cyber-shot部隊には出来ない、カメラの素人ならではの思い切りの良さ、PC出身らしい身軽さを感じさせてくれます。

以前Sonyのビデオレコーダ部隊に対して、

>昔ながらのAV機器のような高音質・高画質を実現させた製品を、PCのようなスピード感と柔軟な設計で次々とリリースする事が出来れば、その時こそSonyの復活、というより新しいSonyの誕生につながると思います。

という意見を書いたことがありますが、これはCyber-shot部隊にも当てはまりそうですね。

カメラ畑を進んできた技術者さんには、カメラのアナログ的な基礎部分、レンズやCCDや信号処理の地道なブラッシュアップを頑張ってもらい、それをベースにPC発想のものづくりが出来るIT系の技術者さんが、最終製品をハイスピードで作り上げていく、今回のCyber-shot G1はSonyの未来像を予感させるモノだと思います。


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コメント 4

かつぽん

そうそう。
デジタルだからこそのアプローチがあるのが
デジタルカメラのデジタルカメラらしい部分だと思うんですよね。
だから、こういうアプローチが当然あって然るべき。
コレ、G2・G3・・・と育って定番化していって貰いたいですよね♪
by かつぽん (2007-03-11 12:43) 

hidex

ちょっと高価ですよね。
でも面白いとは思ってます。
あこがれ?かな。笑
by hidex (2007-03-12 19:13) 

akoustam

>かつぽんさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

MとかRとかNとか、一・二回作っただけですぐ止めてしまうシリーズが連発してますからねぇ、これを地道に続けていく根性と粘りが、今のSonyには必要だと思うのですが。
by akoustam (2007-03-14 14:58) 

akoustam

>hidexさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

きょうび7万円のコンパクトデジカメってかなり高いという印象を与えてしまいますよね。機能満載である以上仕方ないのですが。
by akoustam (2007-03-14 15:00) 

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