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フィロソフィーの違い~CEATEC 2006 レポート [Sony・全般]

昨日の関東地方は、まるで台風でも来たかのような荒れ荒れの天気でしたが、仕事の為の情報収集も必要だったので、CEATECに行ってきました。

仕事関係の企業のブースを一通り見た後、訪れたのは当然ここ、

Sonyブースです。

定時に行われるプレゼンテーションは、Sony Dealer Conventionと同じ演出だったので(まさかボレロのエンディングでカウントダウンする演出までそのままとは(^^;))見る必要は無し、BRAVIAやスゴ録も同じ内容なのですっ飛ばして、目指すのはBlu-ray レコーダコーナーです。

と言っても正面からの外観はDealer Conventionで見てるのであまり驚きはなし、その変わり触ることが出来るので、早速ガラス製という贅沢な出来のフロントドアをアップダウンさせます。

BDZ-S77に引き続き、このフロントドアUP/DOWNスイッチは静電タッチタイプでした。スイッチを押し込むことなく、触れるだけでドアが下にスライドします。この動作とか高級感バリバリ。

(写真わかりにくっ!)

こういうところはさすがSonyですね。BDZ-V9の天板は3.5mm厚アルミという、これまたえらく贅沢な素材が使われているので、さすが30万円のレコーダといった質感を実現しています。

この後、松下ブースでブルーレイDIGAを見ましたが、「これで30万円とりますか?」っていう高級感のかけらもない筐体にすっかり萎えてしまい、AVメーカーと家電メーカーのデザイン哲学の違いを思い知らされました。

またBDZ-V9はアナログ出力用オーディオ回路もお金がかかっており、回路上のコンデンサが全て「SILMIC」だったのを発見したときは、アナログ時代からのオーディオ好きとして思わずニヤリ。

しかし、やはりどうしてもひっかかる三点の疑問を近くの説明員の方にききました。

1.「何故1層なの?」

もちろん2層も考えたが、今この次期に技術検証が完璧で、安心して発売できるのは1層だった。将来は2層ドライブを積むことは検討中。ファームアップでBDZ-V9/V7が2層対応することは無いと考えて下さい。

という回答。スゴ録の延長上にある設計だからでしょうか、2層対応も含めファームアップで機能アップしたりする構造にはなってないような話でした。

2.「iLINK端子がMPEG-2 TS入力に対応すれば、D-VHSやRec-POTあたりからの録り貯めた映像が吸い出し出来ると思うが?」

それも要望としてあるのは重々承知しているが、D-VHSもRec-POTも自社製品ではなく、動作保証するようなものではない。SonyとしてはVPR-T5とBDZ-S77ぐらいのもので、そのためだけにコストと労力をかけることは出来なかった。

ということで、まぁ確かにそれはそうなんですよね。BDZ-S77がD-VHSからのダビングが出来たのもSonyとしては動作保証外のことですし…

3.「アナログOUTが2chステレオしかないので、HDMIでのリニアPCM7.1ch伝送に対応するアンプが無いとDVDと同じレベルの音しか聴けないのでは?」

そうですね。HDMIによるリニアPCM伝送に対応していないAVアンプには、今までのDDやDTSを光か同軸で出力していただく形になりますね。

う~ん、PS3はDolby True HDをソフトウェアデコードしますし、新しい音声フォーマットが出来てもファームアップで対応出来そうですが、BDZ-V9/V7はファームアップとかが出来なさそうなので、将来的な高音質フォーマットへの対応はかなり不安ですね。

どっちみちちゃんとHDMI対応したアンプを買わないといけない、というのはPS3でも変わりませんが。

(当たり前ですが上記の回答はSonyの公式見解ではありません。説明員の方と僕の会話の中で出てきた話の断片なので、そこらへんご注意下さい。)

結局AV機器として出来は良いけど、どうにも手が出せないし、人にも薦められないなぁ、という感想は変わることはありませんでした。

そんなモヤモヤとした想いの中、VAIOコーナーに回ってtype R masterとご対面です。

第一印象は「デカッ!!」の一言。これ本当にAV機器と同じ43cm幅なの?AVラックとか入らなそうに見えるんですけど…

でも筐体のデザイン、質感、見れば見るほど良くできています。まさに「master」の称号にふさわしい重厚感と存在感。それをさらに加速させているのが、周辺機器の出来の良さ。

付属キーボードが新設計になりましたが、会社で使っているtype Rと違って、かなり軽めのキータッチで、キーを押したときの反発のかかりかたが、自宅で使っている東プレのキーボードに近い素直な感じなんです。人によっては軽すぎて安っぽいタッチだと思うかもしれませんが、僕は結構好きな感触でした。

マウスもレーザーマウスになったので反応が良いです。

そして圧巻は24インチディスプレイ、SDM-P246W。僕にとっては悪夢以外の何物でもなかったDELL 2407WFPと同じ、サムスン製VA系パネルを使用しているとは思えないくらい落ち着いた発色。ブース自体かなり暗めの照明だったにもかかわらずギラツキをそれほど感じません、うまく押さえ込んだ印象です。DVI接続で安定した表示なのは当然ですし、やはりSonyがつくるとディスプレイはこうなるんだなぁと思いました。

これはVistaが出てきてBD周りのソフトがしっかりしてきたら、間違いなくメインマシン買い換え第一候補ですね。残念なのはまたも音声出力がミニプラグなこと。せっかくSoundReality積んでいるんだから、金メッキRCA端子とかにしてくれよ~。

で、夕方になって、麻倉怜士氏司会のBlu-ray基調講演を聞きに行きました。

内容はAV Watchに詳しく載っています。

CEATEC JAPAN 2006【基調講演レポート】「Blu-ray Disc 大飛躍」を各社がアピール「フォーマット戦争は終わった」(impress AV Watch)

昨日お伝えしたとおり、SonyからのゲストはVAIO部門の森氏だったわけですが、このやりとりの時には会場大爆笑。

>「レコーダ部門からも必ず凄いモノが出てくると思いますが…… VAIOで2層記録ができたのはPC業界のもたらす、(ドライブの外部調達という)マジックです」とコメント。

何せこのコメントの直後、隣に座っていた松下の小塚氏に「どうもありがとうございます。」と冗談半分で頭を下げたのですから(^^;)。

講演で森氏の話を聞いて思ったのは、同じSonyでもPC畑の人とAV畑の人でここまで哲学が違うのかということです。

近年発売になったSonyのビデオレコーダー、僕が高く評価している製品を列挙していきますと、

Clip-On SVR-715

CoCoon CSV-EX11

PSX DESR-7000

Xビデオステーション VGX-XV80S

Blu-ray Recorder BDZ-S77

登場時期もバラバラで、一見脈絡のないこれらの製品ですが、共通する点が一点あります。

「全てビデオ事業部じゃない部門が作ったビデオレコーダである。」

ということです。

現代のデジタルビデオレコーダというのは、表面的にはAV機器=「家電」であるような顔をしていますが、中身は完全にIT機器=「PC」になってしまっています。

それに対し「スゴ録」にしろ今回の「BDZ-V9/V7」にしろ、Sonyのビデオ事業部が作る製品というのは、旧態依然としたAV機器の思想が悪い形で残っており、新しい時代に事業部全体がついて行けてないような感じがするのです。

AVファンとしては、信号処理に優れた高画質・高音質のAV機器という存在も大好きです。しかし、ことビデオレコーダに関しては、今やそれだけで満足させられるような生やさしい時代じゃないことに気づいて欲しいのです。

昔ながらのAV畑で育ってきた技術者さんの技術へのこだわりというのもわかるのですが、PC畑の人がもつ身軽さ、スピード感のほうが明らかに時代に即しています。type R masterやXビデオステーションなど、AV機器部門の製品を上回る魅力を持ったVAIOの登場を見ているとつくづくそう感じます。

このAV畑の技術者とPC畑の技術者がお互いの設計哲学の違いを乗り越えて融合し、昔ながらのAV機器のような高音質・高画質を実現させた製品を、PCのようなスピード感と柔軟な設計で次々とリリースする事が出来れば、その時こそSonyの復活、というより新しいSonyの誕生につながると思います。

そう考えるとWalkmanもAVとPCの技術者融合が必要な気がするなぁ。オーディオメーカーとしての長年の経験と、PCメーカーらしいスピードと柔軟性、両方の特長をもっている会社って世界的にもSonyぐらいしか見あたりませんから。


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Virgo

捕まえた説明員の方で、こうも違うと、去年のA・WALKMANのバッシングを思い出します。
結局、あの馬鹿げた祭りに疑問を感じ、実際にA608とCPを手にして、OMGJKの事を思えばそんなに悪くないけど・・・iT・・sと比べるとね、という程度。

どうも、S/Lanc端子という総ての事業部の壁を取っ払ったような出井さんや久多良木さんのような存在とそれを許す井深さんの関係が今のSONYには無いからなのかも知れませんね。
なんか、一昔前の自動車業界を見てるようです。
デザイン屋とエンジン屋どっちが偉いの?とAV屋とPC屋どっちが偉いの?
ユーザーにとってはどっちでもいいことですから。
ただ、アナログ時代の長時間録画と違うのは、高画質で更に長く録画出来る仕様があるのに何故搭載しないというユーザー側のエゴがむき出してるんですよね。
PCなら許されても家電では許されないの?
家電では許されてもPCなら許されないの?
結局、無理矢理のせてバグが出ても怒られるし、載せなきゃ怒られるそんな贅沢なメーカーはSONYだけなのかもしれませんね。

最後に決めるのは自分の心ですね。
by Virgo (2006-10-08 03:27) 

ahtoh

2層記録の面だけでも、作った部門の違いが見えてしまうんですね~。
同時期に出るのに、1層記録なブルーレイレコーダーと、2層記録なVAIO・・・。

ブルーレイレコーダーのほうは、多少不安定でも2層で出しておいて、ファームアップで対応!とはしなかったことは、吉なのか凶なのか。
最近製品のトラブルが多いですからね(;´Д`A ```
by ahtoh (2006-10-08 11:50) 

かつぽん

番組表取得のためだけのLAN端子ですか・・・もったいないですねぇ。
by かつぽん (2006-10-09 00:17) 

店員佐藤

せっかく2機種「BDZ-V9・V7」のラインナップになっているので
価格も機能ももっと大きく差をつけられればよかったのになぁ。
ハイエンド向けの機種にV9がもっと機能も価格も上がっており
ローエンド向けにV7がもっとリーズナブルになっていれば競争力も
あげられると思うんですが。。。時間がそんなになかったんでしょうね。
by 店員佐藤 (2006-10-09 12:11) 

akoustam

>Virgoさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

とりあえず僕が当たった説明員の方は、それほど重要なポジションにいる方ではないようでした。

僕も14年前にPC好きがこうじて、大学は「電子工学」に行きましたが、ちょうど過渡期だったせいか、AV的なアナログ電気回路のカリキュラムと、PC的なデジタル処理・情報工学のカリキュラムがぐちゃぐちゃに混在し、どっちつかずの学び方になりました。

たぶん僕と同じぐらいの世代が、開発の中心になっているころだと思いますが、僕らは上の世代ほどアナログ偏重でもなく、下の世代ほどPCに偏重していない(大学に入ったとき電子工学科にもかかわらず、周りのPC所有率は半分ほどしかなかった。)ので、難しいポジションなのかもしれません。

これからさらに下の世代になると、携帯電話偏重な世代が出てくるので、モバイル中心の発想で考える製品が出てくるんでしょうね。
by akoustam (2006-10-10 15:46) 

akoustam

>ahtohさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

家電はPCと違いスキルの低い人から絶対の信頼性が要求されるので、PCのように安易に新技術を採用できないとも言っていました。

ユーザーがもうちょっと勉強して、なんでもかんでもメーカー任せ・他人任せという姿勢を直さないと、メーカーの苦労は増えるばかりでしょうね。
by akoustam (2006-10-10 15:52) 

akoustam

>かつぽんさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

あと携帯電話予約にも使いますよLAN端子(^^;)
by akoustam (2006-10-10 15:55) 

akoustam

>店員佐藤さん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

松下のブルーレイDIGAを見て決めた値段なんじゃないですかね。V7は明らかに高すぎますし、V9は2層対応させれば、もう少し値段を上に設定できたような気が。
by akoustam (2006-10-10 15:57) 

Akihito(・。・)

ブルーレイレコーダは二層記録は出来ないものの完成度は高そうですね。
IT機器が求められる中、純粋にオーディオ・ビジュアルを求める人に向けた機器のような感じがします。
厚い天板、高品質なコンデンサーなどはその表れでしょう。
しかし二層記録はオミットしないで欲しかった。
ウォークマンAのコネクトプレーヤーの反省があるからなんでしょうか

今回のVAIOTypeRMasterはかなり気合が入ってる!
放送局にありそうなな編集マシンだ。
他社のAVパソコンと違う点は映像を見ると言うより編集するところですね。
地デジチューナーを搭載するところでは遅れをとったものの、
HDV編集はいち早く取り組んでましたね。
今回のブルーレイレコーダーがAVCHD規格の再生に対応しているところも
「ハイビジョンを見る→作る」と言うソニーの哲学からなのでしょう。
(M下のはAVCHD再生に対応していない)
by Akihito(・。・) (2006-10-12 14:02) 

akoustam

>Akihito(・。・)さん
コメントありがとうございます。

二層記録非対応以外はかなり出来がいいですよ。松下のブルーレイDIGAよりよっぽど30万円の価値がある出来ですし。だからこそ二層非対応が痛すぎる。

一方のtype R masterは価格以外は文句なし!ってところです。あそこまで突き抜けていれば自作PCとはまた違った魅力が出てきますからね。

AVCHDは松下的にはSDメモリーカードムービーを作るための規格ですから、AVCHD-DVDカムとかには興味なさそうな姿勢ですね。
by akoustam (2006-10-13 07:41) 

Akihito(・。・)

何だか「SDカードにHD画像を記録……」って言うとどっちがどっちか
分からなくなっちゃうのは僕だけでしょうか?
by Akihito(・。・) (2006-10-13 18:01) 

akoustam

>Akihito(・。・)さん
それを言い出すと「SD画像をHDDに記録するカメラ…」なんてものもありますから(^^;)
by akoustam (2006-10-14 13:17) 

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