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Next Generation Portable, Next Generation Sony [Sony・PlayStation]

本日、港区にあるプリンスパークタワーにてSCEのイベント「PlayStation Meeting 2011」が開催され、SCEの次世代ゲーム戦略が発表されました。

PlayStation Meeting 2011 (PlayStation.com)

次世代携帯型エンタテインメントシステムを発表
~究極のポータブルエンタテインメント体験を提供し、携帯ゲーム機市場の更なる拡大を目指す~ (SCEI)

アンドロイド端末向けにプレイステーションの世界を提供するPlayStation Suite「プレイステーション スイート」を発表
PlayStation Certified「プレイステーション サーティファイド」ライセンスプログラムを開始し、
アンドロイドOS搭載携帯型端末向けに「プレイステーション」コンテンツと新たなゲーム開発環境を提供 (SCEI)

発表されたものは大きくわけて二つ。

一つ目はPSPの正統後継で、開発コード「Next Generation Portable(正式名称:未定)」と呼ばれる携帯型ゲーム機です。

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今のPSPの基本形そのままに、よりラウンド感を強調したようなデザインに包まれたその中身は、

・CPU : ARM Cortex-A9 4コア

という今主流のスマートフォン用プロセッサ(例:iPhone4/iPadに使われているA4プロセッサはCortex-A8(1コア)をベースに改良を加えたCPU)の演算処理部(コア)を4つ分搭載したCPUになっていて、単純に考えればスマートフォンの4倍の処理能力を持つということになります。

そしてグラフィックを処理するGPUも、

 ・GPU : PowerVR SGX543MP4+

というiPhoneやAndroidスマートフォンに良く使われる、イマジネーションテクノロジーズ設計のグラフィックチップ(例:iPhone4に使われているのはPowerVR SGX535)で、これまたMP4+(マルチプロセッサ4)という型番から分かるとおり、コアを4つ搭載したGPUになります(このシリーズには2~16コアまで製品バリエーションがある)。

つまりグラフィックの処理能力も単純計算で今のスマートフォンの4倍ということで、CPUもGPUも2010/2011年時点でのメインストリームスマートフォンの4倍の処理能力とは、まさに携帯機器としては破格のスペックを持っていると言えます。

もちろんスマートフォンは進歩の激しい分野なので、今年中にトップエンドはTegra2という2コアタイプのCPUを搭載しますし、2013~14年ぐらいにはNGP相当のスペックが当たり前になるかと思いますが、ゲーム機の製品の寿命サイクルを考えれば、これぐらいの性能が妥当なところでしょう。

続いてディスプレイは、4.3インチ/480×272ドット/ASV液晶だったPSPシリーズから大幅に進歩し、

・5インチ/960×544ドット/有機EL

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というモノになります。ドット数がちょうど縦横2倍なのは、(本家Palmの縦横2倍のドット数だった)昔のCLIEやiPhone3G→iPhone4の時に使われたのと同じ手法で、新機種の高解像度に対応していない古いソフトウェアを走らせるとき、4ドットを1ドットへと単純にパック化表示することで、スケーリングによる画質低下や処理負担を最小限に留めることを目指したのでしょう。

さらに液晶から応答速度の速い有機ELになったことで、アクションゲームや動画の残像感も大幅に低減されるので、より遊びやすく、より動画プレーヤーとしても見やすいマシンになり、高解像度によってWebブラウザの文字も読みやすくなるなど、活用の幅が大きく広がるマシンになりそうです。

心配なのはその生産体制。

ゲーム機は生産台数が普通の電器製品とは桁違いなので、どこまで安定供給できるか、コストは問題ないのか気になるところではあります(パネル寿命に関しては3年フル運用している我が家のXEL-1の調子を見る限り、あまり心配いらないと思います)。

そしてそのディスプレイにはDSやスマートフォンの影響を受けてか、タッチパネル機能が搭載されることになりました。しかし、それだけでは終わりません、

・背面にも前面にあるディスプレイと相対するサイズでタッチパッドがある「両面タッチパネル」

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という面白いアイデアを持ってきました。これが両面とも複数の指のタッチを識別する「マルチタッチ」となっていて、「画面内のキャラクターや世界を裏から突っつく」なんていう新しい使い方も生まれてきそうです。

現行PSPと互換に関しては、

・UMDを廃してその代わりに「NGP専用カード」を新設
・PSPのダウンロード配信しているソフトは動く

ということから「PSP go相当」と考えれば良いでしょう。個人的にはUMDを搭載しなかったことは賛成で、コスト的にも本体サイズ的にもプラスの側面が大きいと思います。

「NGP専用カード」を作ったことに『また独自規格か』というブーイングも聞こえてきますが、これは任天堂で言えばDSカード/3DSカードに相当するモノで、“ブロードバンドの世界的な普及率”“PSPのゲームでも1GBを超えるデータサイズなのに、より高度な処理が実現できるNGPのゲームとなると、軽く数GBのサイズは行ってしまう”といったことを考えれば、全てのソフトウェアを世界中でダウンロード販売のみとは行かない以上、こういう「非ダウンロード型ソフトウェア流通手段」があるのは当然だと考えます。SDやメモステを採用しなかったのは、コピープロテクトの意味が強いのでしょうね。

なお内蔵ストレージの容量がどれぐらいになるのか、拡張ストレージとしてのメモリーカードスロットがあるかは不明です。

本体のサイズは、

・PSP-3000 : 169.4×18.6×71.4mm 189g
・NGP : 182×18.6×83.5mm(予定)質量未定

ということでフットプリントは縦横1cmほど大型化、厚さはほぼそのままということになりそうです。バックライトの必要な液晶から不要な有機ELに変わったこと、UMDが無くなったことから(背面タッチパッドがあるとは言え)、もっと薄くなっても良さそうなもんですが、僕は背面全体に広く薄く延ばした大きなバッテリが収まるからこの厚さになったのではと予想します。

質量は未発表なのですが、バッテリの重量分ちょっと重くなるんじゃないかな(初代PSPと同じ280gぐらい?)。あとプレスリリースの写真を見る限り、WalkmanやiPhoneのような「固定式バッテリ」を採用していると思われます。

その他の特徴としては、

・左右デュアルアナログスティック
・802.11b/g/n無線LAN、Bluetooth(2.1+EDR)、UMTS-3GWAN機能搭載
・前面、背面デュアルカメラ
・3軸電子コンパス、6軸検出センサー(3軸ジャイロ+3軸加速度)
・マイク、GPS内蔵

と言ったあたりが公表されています。

この中でも特に注目はゲーム機としては初であろう「3G標準搭載」で、スマートフォンのように“常時ネットワークにつながっている”ことを前提にした、新しいゲーム、新しい使い方がどんどん提案されてくると思います。問題は料金ですが、世界中のキャリアとの交渉が待っていますし、この世界はゲーム機より複雑なので一体どうなるか予想もつきません。だいたいSIMカードスロットどこにあるの?(笑)

最も肝心な価格が未発表ですが、過去の慣例から考えて9月のTGSかその後ぐらいまでお預けでしょう。ただ、

・UMDが無くなったことで、製品ライフサイクル中の製造コスト低減が難しいメカ機構が大幅に減った
・以前のように中心となる半導体チップを完全新設計にしなかった
(厳密には諸刃の剣であるのだが…)

といったあたりから、比較的楽観視していいのではないかと思っています。34,800円、いや29,800円スタートも十分有りと予想しておきましょう。

発売日はずばり11年11月11日予想で。外しても責任はとりません!(笑)

次の詳細やローンチタイトルは、おそらく6月のE3と9月のTGSで大々的に発表されるでしょうから、それまではwktkしながら待つとしますかね。

 

 

そして、ある意味そのNGP以上にインパクトのある発表となったのが、SCEのゲームプラットフォームをソフトウェア化し、Androidを皮切りにあらゆるデバイスに展開する「PlayStation Suite」です。

まずは第一弾としてAndroid 2.3上でPS1ゲームをエミュレート駆動するアプリの開発が発表され、おそらく2月のMobile World Congress 2011で、SonyEricssonから発表されるコードネーム:Zeusこと「Xperia Play(R800i)」にはこれが搭載されることになると思われます。

このPlayStation Suiteは、SCEやSonyEricssonのハードウェアに限らず、SCEが「PlayStation Certified」認定すれば他社のモノでもその認定ロゴが提供されるとのことで、他社ハードウェア上でプレイステーションファミリーのゲームが動くということになり、

「ハードウェア・OS・開発ツール・ソフトウェア審査・ソフトウェア製造・ソフトウェア流通まで、サプライヤーが垂直統合でクオリティコントロールし、ユーザーに提供する」

というファミコン以来の家庭用ゲーム機業界の構造(今のAppleも基本この構造)が根底から覆ることになります。

ではSCEはどこで儲けるかというと、まず無審査というポリシーを採用したために、ゴミのようなアプリが氾濫し、優秀なアプリが埋もれがちになっているGoogleマーケットとは違う、「SCEによってクオリティが担保されたゲームアプリのお店」=「PS Store」を提供することで、ユーザーに安心してゲームアプリが買える場所として認知され、そこに人が集まってくることを期待してるのだと思います。

また、既に枯れたプラットフォームで開発者もいなくなったPS1を再利用・再活性化することで、今までSCEと縁遠かった開発者をPSファミリーに引き込み、PS3やNGPのような「垂直統合型」のビジネスに絡ませることも考えられ、実際SCEは開発環境を新たに提供する予定となっています。

そして、Androidスマートフォンだけでなく、Android3.0以降を採用した各社のタブレット機器や、GoogleTV、ChromeOSを採用したPC、場合によってはWindows PCにWindows Phoneスマートフォンも巻き込んで、ネットにつながるあらゆる情報機器に「PlayStation Suiteプラットフォーム」を提供すれば、SCEのゲーム機以外のハードウェアを持った人も、PlayStation NetworkアカウントをもったSCEの顧客として、取り込んでいくことが可能になります。

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こうしてPSNアカウントを持った人が世界中に拡がっていき、ゲームだけではないコミュニケーションや交流の場を設けていけば、インターネット上に巨大な顧客同士のネットワークが出現し、その中心でゲームをトリガーとしたアプリの流通と決済プラットフォームを押さえたSCEが、大きな力を持つことになります。

ハードウェアもOSも自前で持たず、ハード・プラットフォームの垣根を越えた、人と人、人と企業の「ワールドワイドなつながりの場」を提供することで人を集め、その中でのやりとりが大きな力を持つ。そういう存在が既に世界に一つありますよね?(笑)

そうです、PlayStation SuiteはFacebookになる可能性を秘めているのです。

今日の発表会でSCEの平井社長は、「コミュニケーションなどあらゆることがゲーム・遊びになる」という世界を提唱していましたが、まさに全ての行為を遊びにするプラットフォームとして、PlayStation SuiteはただのPS1エミュで終わらない重要な鍵を握っているのです。

現在6000万アカウントの登録があるPlayStation Network、一方5億人を超えてまだまだ増え続けるFacebook、いつかライバルとして対峙する日がくるのでしょうか。

 

 

デジタル化によってハードウェア設計の難易度が下がり、新興国メーカーとの厳しい価格競争に晒されている日本のエレクトロニクス業界。

相対的に価値が低下したハードウェアに代わって、日本企業もソフトウェアやプラットフォームで儲けなくてはダメだ、というのはよく言われていることですが、ハードウェア技術の進化によって、ソフトウェアだけで自分達の思い描くプラットフォームを築く条件が整ってきたことを、見逃さなかったSCEはさすがだと思います。

純粋なエレクトロニクス企業として生まれたSonyが、SCEを中心にしてソーシャルネットワークプラットフォーム企業に生まれ変わる。PlayStation Suiteが成功したとき、そこにはNext Generartion Portableならぬ「Next Generation Sony」が出現しているのかもしれません。

 

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