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8年越しの夢 [スペイン・フランス自転車旅行記]

峠の頂上での野宿で迎える朝というのは、景色も良くて気持ちいいものですが、今日のアスパン峠は眠っている間に機材トレーラーがやってきて、知らぬ間にこんなものが出来上がっていました。

RIMG0501.jpg

(これは峠の頂上を示すゲート)

既に麓から続々と観客が上がってきていて、あたりは喧噪に包まれています。朝の9時ごろには僕のテントの周りも、観客でいっぱいに。

世界中からファンが集まってくるので、応援する国旗も、フランス、スペイン、バスク、アメリカ、オーストラリア、アイルランド、イングランド、オランダと様々なものがはためきます。

8年前、アルプスのラルプデュエズで初めてのツール観戦をしたときは、確かにお祭りみたいな賑やかさがあったり、自転車好きが一同に集まって朝から坂登りを競い合うなど、十分に楽しめたのですが、やはり他の国の人々と違って、僕ら日本人は応援する自分たちの国の選手を持たない分、どことなく肩身の狭い思いを感じていました。

あの時あそこで出会った日本人自転車愛好家同士「やっぱりいつかは日本の国旗を振って、日本人選手を応援したいよね。」と言っていた“夢”は、今日現実のものとなるのです。

僕も胸を張って日本の国旗をはためかせました。「俺たち日本人だって負けないぞ」と。

すると、やはりどこか珍しいのか「おおジャポネか!」「誰か出てるんだっけ?」「ベップとかいうのがいたな」「アラシロはあれもジャポネか!」「是非記念撮影を」と周りからは注目の的。果てはメディアのIDをぶら下げた人からも「一枚撮らせてくれ」と頼まれたりして、かえってこっちが戸惑ってしまいます。

でもこれこそが僕の求めていたもの。

今までの傍観者的な立場でなく、彼ら西洋人と対等な立場で「お互い楽しもうじゃないか」と言うことが出来るようになったのです。そういう意味では新城幸也・別府史之両選手と、この二人を送り込むことに成功した、全ての日本の自転車関係者の方々には感謝の言葉もありません。

そんなこんなで昼の13時前、アスパン峠にキャラバン隊がやってきます。

ツールをご存じ無い方のために、この「キャラバン隊」なるものが何なのかをご説明いたしますと。

ツール・ド・フランスは一般の道を走るロードレースであるため、普通のスポーツのように「入場料収入」というものがありません。なので運営費用のほとんどはスポンサーからの広告収入でまかなうことになります。

ただしフランス一周3500Kmも走って沿道にずっと観客がいるわけですから、それをターゲットに宣伝しない手はありません。そこでスポンサーは、宣伝カーの隊列を作り、選手たちより1時間ほど先に同じルートを走ることで、観客に自社製品のPRをするのです。

観客にとってみればキャラバン隊は選手がそろそろ来るという合図になりますし、宣伝カーがいわゆるノベルティグッズをばらまきながら走るので、ただ道に立っているだけで色々なモノがもらえたりします。

で、今年は計34のスポンサーが、様々な趣向をこらした車を出して隊列を組むのですが、その一つ「HARIBO」というお菓子のメーカーはこんな感じ。

右手で撮影しながらも、左手でナイスキャッチをしてしまいました(笑)

キャラバンが通り過ぎると、次は生中継用のヘリコプターが近づいてきて選手が近づいてきたことがわかります。

見晴らしのいい峠の頂上なら双眼鏡とかがあると、下から競い合っている選手たちを見れるので観戦には絶好のポイントです。

そして昼の2時過ぎ、ついに先頭3人が僕の目の前にやってきました。

ここも7%ぐらいの登り坂のはずですが、さすがは世界のトッププロ、まるで平地のようなスピード(時速20Kmぐらい)で走っていきます。

なお、あくまで撮影ではなく応援が主目的なので選手の動画はありません。ごめんなさい。

001.jpg

(国際映像に映った瞬間をキャプチャーしたものがネットにあったので拾ってきました。右手にHandycamが握られているのがなんとも(^^;)ちなみに何故川崎フロンターレのユニフォームかというと、元々はこの後のバルセロナでこれを着てカンプノウに行くために持ってきたもので、この日の朝に「日の丸だけじゃなくて日本のクラブのユニフォームなら、『俺は日本人だ』といやでもわかるだろう。ついでにフロンターレのアピールにもなるし。」と思いついて着ることにしたのです。)

そこから結構ばらばらにちぎれた状態で、何人かずつ選手が通過していき、二つ目の大きな集団のあたりに新城選手がいました。不思議と日本人だとわかるものですね(なにせあのランスアームストロングがいつ通過したのかすらよくわからなかった)。

僕も正直少しは気の利いた応援をしたかったのですが、とにかく「いけー!がんばれー!あらしろー!」と絶叫しながら旗を振るのが精一杯。何というか「速く!」というよりも、「とにかくまずは無事にゴールまで行ってくれ!」という祈るよな気持ちのほうが勝っていた感しです。

その後少し遅れて別府選手もやってきました。ここでもやっぱり「ふみー!いけー!がんばれー!」と絶叫しただけでおしまい。彼ら二人に、この見知らぬ日本人オヤジの応援の声が届いたのかちょっと自信がありません(笑)

最後に集団から後れていたナポリターノ選手とファンヒューメル選手(別府と同じスキルシマノチーム、なにやら「ケニー」の愛称で世界的人気になってるらしい)の通過を観客みんなで応援して、あっけなくツール観戦は終了。でもやっぱり8年越しの夢がかなった満足感はなにものにも代え難いものでした。

日本人選手、まずはシャンゼリゼゴールまでの完走が目標と言ったところでしょうか、そして次はステージ優勝、その次は各賞ジャージ、そして日本人マイヨジョーヌと夢はふくらんでいきます。そのための大きな一歩として二人にはもっともっと頑張ってもらいましょう。

 

で、観戦が終わればみんな撤収して移動開始。僕もキャンプ用具を全部パッキングし、選手の後を追うようにアスパン峠を西に下っていきます。

ところがツールマレー峠での観戦を終えて、東側に下ってきた一団と鉢合わせ。道路は大渋滞となってしまいました。

RIMG0502.jpg

自転車ロードレースでこんなに人が集まるって、フランス人はほんと自転車好きなんだなぁ。

僕もその渋滞の間を縫うように進んで、麓のBagneres de Bigorreの街に泊まることに。明日は帰りのバルセロナからの飛行機に向けて、さらにフランス国内を東へと進みます。


タグ:旅行
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コメント 5

かつぽん

良いですね、夢が叶った瞬間。
文字だけだったけど十分伝わりましたm(__)m
by かつぽん (2009-07-13 17:37) 

Riever

あちらの方々はなかなか陽気でいいですねぇ。
生き生きとした雰囲気が感じられました。
by Riever (2009-07-13 19:40) 

K

おじゃまします
 ホント、現地で、ツールで日本人ライダーを応援できる喜びが伝わってきます^^。
 では気を付けてツール&ツーリングを楽しんできて下さい^^/。
by K (2009-07-13 20:10) 

店員佐藤

いいなぁ、こんな夢中になれるものがあって!
by 店員佐藤 (2009-07-14 08:22) 

ajisai

いつも、影ながら、ROMさせていただいております。
ajisaiです。

すごく、この旅の記事を読ませていただいて、熱いものを感じました。
ツールドフランスとかは、さっぱり、分からないのですが、こういう目的を持った旅を読ませて頂いただけで、ありがたい気持ちになりました。

by ajisai (2009-07-14 16:13) 

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