ES [Sony・Audio]
既報の通り、Sonyよりエントリークラスのマルチチャネルインテグレートアンプ、TA-DA3200ESが発表されました。
オーディオの世界に興味のない方だと、「希望小売価格99,750円でエントリークラス?」って思われる方も多いと思いますが、Sonyでも、最上位機の9100ESが68万円、中級機の7000ESが24万円というようになるのが、アンプの世界だったりします。
今まで、このクラスはSonyのオーディオの中でも、一段上の扱いを受ける「ESシリーズ」ではなく、非ESシリーズのTA-DB890などが担ってきましたが、今回3200ESの登場で、ようやくこのクラスにも「SonyのES」がやってくることになりました。
オーディオマニアの間では「Sonyのオーディオと言ったらとりあえずESじゃないと」、と言われるぐらい評価の高いESですから、ここはSonyとしても気の抜けないところ。では、TA-DA3200ESがどのような出来になっているのか見ていきます。
1. 新開発の高音質“ 広帯域アナログパワーアンプ ”回路を搭載
上位機の9100ES/7000ESは、今やSonyの高音質アンプの代名詞となった、デジタルアンプ「S-master」の強化版「S-master PRO」を使ってきましたが、3200ESはコスト削減が優先だからなのか、プレーンなアナログアンプを持ってきました。
「S-master」といえば、BRAVIAや、僕も使っている初心者向けのホームシアターパッケージにも起用されるほどですから、そんなに値段の高いアンプシステムでは無いはずなのですが、なまじ安いデジタルアンプよりは、アナログアンプの方が音がいいということもあるので、PROが使えないならアナログにしよう、という判断だったのかもしれません。
といってもただのアナログアンプではなく、S-master PROの開発時に得られたデータから、「アナログがデジタルに劣る部分は何か?」という問題点を抽出して、
- 高域が細く濁りがち
- 中域のフォーカス感が不足しがち
- 低域が遅れがち
といったあたりを改良した“広帯域アナログパワーアンプ”という新アンプを開発してきました。
オーディオは実際に聞いてみるまで音の善し悪しは判断できませんが、実際にここらへんが改善しているなら、かなりいい音が出ると思います。
2. 1125p(1080p)の映像信号とと7.1チャンネルリニアPCM音声信号に対応したHDMI端子を装備
最近急速に普及してきたHDMI端子ですが、利点の一つとして、映像信号と音声信号を一本のケーブルで送れる、というのがあります。
またBlu-rayの登場に伴って、映画などのパッケージでは、今のDVDに使われている「ドルビーデジタル」や「DTS」といった音声フォーマットの上位規格、「ドルビーデジタルプラス」や「DTS-HD」などが将来的に使われる事になるのですが、現段階では規格が100%固まっていないため、アンプ側が対応デコーダを持つことが出来ません。
それでは今アンプを買ってしまったら、将来Blu-rayに収録されている一番いい音を、アンプにデジタル伝送して楽しむことが出来ない、なんてことになってしまいそうですが、それを解決するのが「7.1chリニアPCM対応」です。
アンプ側がこれに対応していれば、Blu-rayプレーヤ側で新音声フォーマットをデコードした後、HDMIで7.1ch分のプレーンなPCMデータを送出する機能さえあれば、このアンプでも音質が劣化することなくBlu-rayを楽しむことが出来るというわけです。
映像信号も現規格の最高画質である1080pにも対応しているので、この3200ESは今からでも安心して買えますね。
3. 自動音場補正機能「D.C.A.C.」(Digital Cinema Auto Calibration)搭載
最上位機9100ESに搭載された、自動音場補正機能「DCAC」が3200ESにもやってきました。
正確には同じ「DCAC」を名乗っていても、31バンドのグラフィックイコライザで、ものすごい細かい補正を行う9100ESに対し、3200ESは6バンドのパラメトリックイコライザ使用ということで、かなりコストは押さえられていますが、この自動音場補正機能があれば、オーディオ初心者でも難しい理論抜きで、ユーザーの使用環境に応じた最適補正を得ることができますし、オーディオ好きも面倒がなくなるので、3200ESを買う層には非常にありがたい機能になると思います。
4. アナログダウンミックス機能とOPプロセッシング回路を登載
アナログダウンミックスはTA-DB890などにも搭載されているSonyお得意の機能ですが、この機能があると、マルチチャンネル収録されている音も、不自然な音にならずに2ch再生できるので、サラウンドではなく2chオーディオで楽しみたい、というユーザーにもお勧めできるアンプになっていると言えます。
5. ビデオアップコンバータ/ダウンコンバータ機能を搭載
コンポジット(皆さんには黄色い丸い端子としておなじみ?)信号や、Sビデオ信号、コンポーネント信号をHDMI用信号に変換する、「ビデオアップコンバータ」が付きました。
これがあれば、どんなビデオ機器をつないでも、アンプ→テレビ(モニター、プロジェクタ)の間はHDMI一本で事足りるようになるので、接続はかなり楽になります。
ただしアップスケーラは付いてないので、480i(普通のテレビ信号)は480iのままでHDMI信号に変換され、伝送することになります。
その他ユーザーがより高品位な電源ケーブルに交換できるよう、電源ケーブルが脱着式になっているなど、さすがESを名乗るだけの装備になっています。
以上TA-DA3200ESを見てきたわけですが、これからホームシアターをやってみたい、でもオールインワンパッケージじゃ物足りないから自分で組みたい、というユーザーに強くお勧めできる入門機に仕上がったと思います。
特に特長の2・3・5は、2年前に発売された中級機の7000ESでも付いていない機能なので、ある意味「下克上」な製品になっていますから、これが10万円以下となると結構羨ましいって感じです。
僕自身は、新居で組む予定のホームシアターシステムに7000ESの後継機を狙っているので、次に出るであろう7000ESの後継機が、2・3・5の機能を積んできたらいいなぁと思います。
昔に比べ、市場が小さくなって来ているオーディオの世界ですが、「オーディオのSony」は今でも健在なんだなと感じた、TA-DA3200ESでした。
HDMIはVer1.3なんですかね?
AV周り、そろそろちゃんとした製品を買う頃に来ているのかなぁって思ってます(^_^;)
by arkstar (2006-08-11 10:04)
akoustamさんの記事を拝見して、益々欲しくなってきました。現在愛用のESシリーズのCD、DATもかれこれ10年選手になりそうだし・・・とはいうものの7.1chアンプだとスピーカーも追加しなくてはいけないし、ん~ん悩ましいですね。
by (2006-08-11 22:22)
>arkstarさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。
HDMIはVer1.2Aだそうです。Ver1.3搭載一号機はPS3で決まっているみたいですから。ま、今のテレビとカメラ、BDの性能ではVer1.3の色深度なんて活かしきれないんですけど。
by akoustam (2006-08-14 00:19)
>シマリスさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。
最近のマルチチャンネルアンプは、ピュア2chアンプ並の音も期待できるようなので、実際に出て音を聞いてみるまで何とも言えませんが、リプレースするのもいい感じかもしれません。
うちのサンスイアンプやパイオニアCDは13年選手ですから、うちもそろそろ…
by akoustam (2006-08-14 00:23)
はじめまして。らびと申します。
7000ESの後継機ですが、いつごろ出てくるのでしょうか?
by らび (2006-11-20 12:16)
>らびさん
コメントありがとうございます。
ESアンプの日本向け製品は基本1年1作ペースですから(2003年9000ES、2004年7000ES、2005年9100ES、2006年3200ES)、来年の年末商戦に7000ESの後継機が出てくるのではないでしょうか、そのころにはHDMI1.3対応も楽になるでしょうし。
by akoustam (2006-11-21 11:47)