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急がば回れ [Sony・PlayStation]

開催から時間が経過して、ようやく「PS Business Briefing 2006 March」の詳細が多数報道されはじめました。ブリーフィングでは、PS2やPSPの現状や新戦略も語られてたうようですが、ここではやはりPS3の延期に関して考察していきたいと思います。

後藤弘茂のWeekly海外ニュース 久夛良木健氏が語ったPS3遅延の理由(impress PC Watch)

本田雅一の週刊モバイル通信 “とうとう"発表されたPS3の延期(impress PC Watch)

「いまから5年後にはすごいことが起きそう」――久夛良木氏(ITmedia Games)

SCE社長である久夛良木さんの説明によると、延期の理由は、

  1. BDの著作権保護技術であるAACSとBD+の仕様確定が大幅にずれこんだことによる影響。
  2. 次世代HDMIの規格確定を待たなくては行けなかったこと。
  3. 開発キットが未成熟で、とても良質なタイトルをこの春に提供できる見込みが立たなかったこと。

の三点につきると言うことになります。

これが本当なら、もしこの状況に対してSCEが強行突破(2006年春の発売)をした場合、「初代PS3はBDプレーヤになると言いながら(BDロゴも表示していながら)、再生できないBDが存在する。」「将来的に次世代HDMI対応のテレビが出てきても、初代のPS3はその能力を発揮できない」「ハードが発売されたのはいいけど、PS2とさして変わらないゲームしか遊べない。」ということになってしまい、PS3の評判・信頼はがた落ちになってしまう危険性を持つことになります。

それを思い切って延期をすることで、完全な仕様で固め、作り置きをしておくことで供給不足を回避し、ついでに世界同時立ち上げで、一気にPS3としても、BDプレーヤとしても、ライバルに対するアドバンテージを確保する、という戦略に出ることになったわけです。

短期的な結果しか追わない、株式アナリストや、各証券会社、格付け会社なんかは、一斉にSonyに対して「ネガティブ」の評価を下すでしょうが、果たして延期をするのとしないのと、どっちがSonyにとってよりよい結果をもたらすか、冷静な人ならば自ずと答えは出てくると思います。

まして家庭用ゲーム機というのは、5~10年スパンで利益を積み上げていくビジネス(PS2はこの3月で発売から6年、そしてFFXIIの発売がその6年目の3月というぐらいですから)、1年を4分割する四半期決算であーだこーだ語る人たちとは、およそ相容れないビジネスモデルといえます。

あのときのSCEの決断は正しかったと、3年後ぐらいには証明されるのではないでしょうか。

まさに「急がば回れ」の典型例として。

 

それにしても久夛良木健氏という人は、やはり並の人間では無いなと、今回も僕はつくづく思いました。

まず社長一人で、ここまで会社全体の戦略を明確に語ろうとする人は、日本人にはおよそいないタイプで、あの自分一人でプレゼンを進めていく姿はスティーブ・ジョブズ氏とか、カルロス・ゴーン氏を思い起こさせます。

しかも今回のブリーフィングでも、まずはPS2/PSPの好調を語って、今急ぐ必要は無いということを強調しておいてから、PS3の延期に話を持って行き、「延期」というマイナスを「世界同時立ち上げ100万台供給」という大風呂敷で、まるでプラスになったかのように、報道陣を煙に巻いてしまうプレゼン術には脱帽です。

それと、PSPの□ボタン問題では「仕様です。」と発言して、色々物議をかもしたこの人ですが、冷静に任天堂のDSの成功を評価し、自分たちのPSPが、どこで負けているかも、これから何をして行かなくてはいけないかも、ちゃんと把握しているんですね。僕はPSPを「でかすぎる」と思っていますが、そういうユーザーニーズもちゃんとお見通しのようです。

あと、一部ではよく知れ渡っていますが、この人が相当なAVマニアでもあることがあらためてわかりました。今回延期の原因になった次世代HDMIですが、今のHDMIがRGBをそれぞれ8ビット(=256階調。×3原色分で約1677万色)で映像信号を伝送しているのを、

>「内部で16bit処理しても、出力時に8bitになってしまうのは意味がない。マッハバンドの発生などの欠点もある」とし、「できれば16bit欲しいが、最低でも12bit。帯域を2倍にした次世代のHDMIは、我々が強く要望していたもの」(今年のInternational CESでの久夛良木さんの発言)

というように、HDMIの規格を決めるHDMIファウンダーズに要望して、新規格を作らせてしまったのです。これでPS3はRGB各色12ビット(=4096階調。×3原色分で687億色)で映像信号を伝送するという能力を持つことになります。

これの何がすごいかって、この687億色を表現出来るテレビが現時点では存在しないこと(そもそも687億色で撮影できるカメラがないので、仮に対応しても全く意味がない)。それでも10年スパンで将来を考えれば、今から積んでおくべきであるという判断をしてしまうのですから、映像に対するこだわりには執念すら感じます。

良くも悪くも個性的な、この人から生み出されるPS3が8ヶ月後に世の中に登場したとき、いったいどんな夢を見せてくれるのか、僕は楽しみに待っていようと思います。

がんばれSony Computer Entertainment!


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