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Super Steady [Sony・Cyber-shot]

 既報の通り、Cyber-shotに2つの新機種が発表されました。

カシオのEXILIMが先鞭をつけた「薄型・大型液晶デジタルカメラ」というジャンルに、光学3倍ズーム・屈曲レンズ・2.5インチ液晶という機能で、Sonyが正面から挑んだ意欲作Cyber-shot DSC-T1が登場してから2年、ユーザーの求めるトレンドは「薄型・大画面」に加え「手ブレ補正による高画質化」という方向へ行き、「光学手ブレ補正」でヒットを飛ばすPanasonic、「高感度でシャッター速度を上げる」で挑むFUJI、「ポストプロセッシング」で手ブレを克服しようというCASIOなど、各社様々なアプローチで手ブレによる画質低下対策を施してくるなか、沈黙を保ち続けたSony主力のCyber-shot Tシリーズは市場からも存在感を失いつつありました。

Sonyも手ブレ補正の必要性は重々分かっていたはずなのに、何故動かなかったのか?内部の事情は不明ですが、満を持してこの冬商戦に手ブレ対策を施したカメラを投入してきました。

光学手ブレ補正とISO640の感度で手ブレに対抗するT9と、広角時F2.8の明るいレンズとISO800の高感度で手ブレに対抗するN1、今回の2機種を順番に見ていきましょう。

デジタルスチルカメラ Cyber-shot DSC-T9

市場のトレンドが「手ブレ克服」に動く中、「薄さ1cm以下」という別の方向に振ってユーザーを驚かせたDSC-T7から約半年、今度こそ市場のトレンドに正面から取り組んだ、DSC-T9は、光学手ブレ補正だけでなくISO640という高感度も手に入れて、「ダブルで手ブレ対策」というのを打ち出してきました。

1.「手ブレ」による画像のブレを抑える「光学式手ブレ補正」機能搭載

撮影時の手の細かい揺れから発生する「手ブレ」、もともと静止画の写真ではそれほど目立つようなものではなく、十分に速いシャッタースピードさえ確保されていれば、超望遠時以外は普通の人があまり気にする問題ではありませんでした。

それに対し動画を撮影するビデオカメラでは、手ブレはどんな場合でも目立つもので、実はビデオ撮影には三脚必須というのが、ちょっとビデオカメラに詳しい人の間では常識なのです。

なので、カメラの微妙な揺れをジャイロセンサーで感知し、一列に並んだレンズの中の一枚を揺れと逆にシフトさせることで手ブレを吸収する「光学手ブレ補正」という機能は、ビデオカメラのHandycamでは、はるか以前から搭載されているものでした。

そしてそういった歴史的な流れから、光学手ブレ補正に関する重要特許はビデオカメラに強いSonyと松下電器が大半を押さえており、あれだけLUMIXがヒットする中、各カメラメーカーが「コンパクトカメラに搭載の必要なし」とまで言い切っていたのは、この特許の問題もありました(例外なのがCanon。フィルム一眼レフカメラ「EOS」の時代から高級クラスの望遠レンズ向けに、光学手ブレ補正に地道に取り組んでおり特許を多数保有している。)

逆に言うと、Sonyこそが光学手ブレ補正搭載機を容易に出せる立場にいたのに、今まで採用してこなかったのですから、HandycamとCyber-shotの技術陣の連携がいかに悪かったかがよく分かります。

しかし遅れに遅れただけあって、レンズをシフトさせるスペースを確保するのが難しい、屈曲光学系レンズのTシリーズに搭載という離れ業をやってのけてくれました。

となるとライバルはLUMIXではなく、KONICA MINOLTAのDiMAGE X1。こいつはレンズを一枚だけ動かすのではなく、レンズユニット全体を動かすという荒技で手ブレ克服を実現しており、沈胴に比べ「起動が速い」「出っ張りがない」という特長を生かしながら、手ブレ補正ありというのはT9と直接ぶつかることになるでしょう。

2.「被写体ブレ」や暗い場所での撮影に効果的な高感度ISO640に対応

手ブレというのは撮影者が持ってるカメラが揺れることに原因があるわけですが、実はブレの本当の原因は、最近のコンパクトデジカメの「シャッタースピードが遅い傾向にある」というのがあります。

ではなぜシャッタースピードが遅くなるのかと言えば、無茶な高画素化による一つ一つの画素の狭小化。小さすぎるセンサーでは弱い光が受け取れず、感度が大きく低下してしまったので、シャッターを長時間開けて光を多く取り込む必要性が生じたからです。

遅いシャッタースピードは手ブレだけでなく、写そうとしている被写体の動きを止められない「被写体ブレ」の原因にもなります。それを克服するにはCCDの感度を上げるしかない。T9はこっちにも取り組んで、今までのTシリーズの上限ISO400からISO640に一段上げてきました。

しかし感度を上げるということはノイズの増加も伴います。夜景の写真などで全体にざらっとした画質になるのはこれが原因。そこでJPEG圧縮する前のRAWデータの段階でノイズ除去を行う「クリアRAW NR」も搭載することで、少しでも高画質になるように配慮されています。

3.色再現性を大幅に向上させた新開発2.5型液晶モニター「クリアフォト液晶プラス」搭載

Tシリーズにとって2.5インチの大型液晶はアイデンティティといっていい存在。それをさらに色再現性を高めた「クリアフォト液晶プラス」に進化させてきました。

僕がT7を使っていて感じたのが、Tシリーズのクリアフォト液晶は、明るいが全体に色味が薄くいざPCで再確認してみると、実際の写真との違いに愕然とする、ということ。これが少しでも改善されているなら、より失敗のない写真を残せると思うので注目したいところです。

4.有効600万画素Super HAD CCDと光学3倍ズームのカール ツァイス「バリオ・テッサー」レンズ搭載による高画質記録

う~ん、1/2.5インチという大きさはそのままで500万画素→600万画素にさらに高画素化ですか?こればっかりは賛成しかねますね。せめて1/1.8インチにするか、逆に400万画素に落とすかして、狭小画素化の流れを止めて欲しかったのですが。

レンズはおなじみバリオテッサー、そろそろ多層膜コーティング「T*」も採用して欲しいなぁ。

5.洗練されたカードサイズボディ

DSC-T1 91mm×60mm×21mm 重さ 180g
DSC-T7 91.7mm×60.2mm×14.7mm 重さ 136g
DSC-T9 89.7mm×54.9mm×20.6mm 重さ 159g

厚さ以外は実はT7より一回りちっこくなっているんですね。厚くなったことでホールド性がよくなって、三脚穴も標準装備なようで、カメラとしての基本という意味ではT7よりかなりの進化といえますね。

6.撮影した画像にBGMをつけて再生できる「音楽つきスライドショー」

DSC-M2以来おなじみになった、音楽スライドショーと本体内蔵メモリ(T9は58MB)によるポケットアルバム機能は健在です。特にTシリーズは23万ドットと解像度の高い液晶なので、M2よりよっぽど液晶で鑑賞するのに向いてるというのは、なんとも笑ってしまうところです。

その他、ハイビジョンテレビに映すのに向いた16:9(1920×1080)撮影モードや、Tシリーズ伝統の拡大鏡モードもついていて、今のトレンドは全て押さえた出来になっています。

おそらく沢山の方が待ちこがれていたであろう「光学手ブレ補正機能搭載Cyber-shot」、ようやく出てきたという感じですが、待たせただけあってよく考えられているなぁというのがT9の印象です。
これをベースにLUMIXのように、光学手ブレ補正を全面展開するのか、それともあくまでTシリーズ限定にするのか、みなさんはどちらを期待されるでしょう。

僕個人としては、以前述べたように光学手ブレ補正よりも「明るいレンズ」「低画素化」による高画質化を望んでいますが、それ以上にSonyらしいおもしろカメラを期待します。

売れ筋の王道を行くT9で一息ついたら、もっとこれぞSonyというカメラに挑戦して欲しいです。例えば回転レンズ初の光学手ブレ補正付きでCyber-shot Fの復活とかね。

 

デジタルスチルカメラ Cyber-shot DSC-N1

アメリカでは先行発表されていたDSC-N1が日本にも登場です。

1.有効810万画素Super HAD CCDと光学3倍ズームのカール ツァイス「バリオ・テッサー」レンズ搭載による高画質記録

こちらは1/1.8インチのCCDに沈胴タイプのバリオテッサーということで、どうやら大ヒットしたPシリーズの直接後継という流れになりそうな雰囲気です。屈曲レンズより明るいレンズ設計が可能ので、広角時F2.8とT9より有利になっているのですが、肝心の望遠側でF5.4とT9より暗くなるというなんだかちぐはぐなレンズ設計です。

それにしてもこのクラスのカメラを買う人に800万画素なんて必要なのかな?なにやらシャープはコンパクトデジカメ向け1000万画素撮像素子を開発したらしいですが・・・

2.「手ブレ」や「被写体ブレ」を防ぎ、暗い場所での撮影にも強い高感度ISO800に対応

T9と違って光学手ブレ補正を付けてこなかった分、より高感度のISO800まで対応することで手ブレ克服に挑んできました。「クリアRAW NR」によるノイズ対策ももちろん搭載です。

ここまで攻めるなら、500万画素でいいからISO1600とかISO3200までいけるとかの特長が欲しかった。これではT9に比べてインパクト弱いような。

3.色再現性を大幅に向上させた新開発3.0型大画面液晶モニター「クリアフォト液晶プラス」搭載

ついに液晶の大きさも3インチに到達ですか、三洋電機も3インチ機を出していますが、これからは各社3インチにトレンドが移ってくるのでしょうか。

4.簡単操作のタッチパネルを採用

大画面に追いやられてボタンを配置する場所が消えた、というのが真相かも知れませんが、Handycamでタッチパネルオペレーションを使ってみた感想としては、結構使いやすいと言っていいと思います。特にスポットAFはカメラ初心者の人がピンを決めるのには非常にわかりやすいやり方だと思うのでおすすめ。

さらにペイント機能で写真に落書きできたりするのは、女子高生とか女子大生にはすごくうけるかもしれません。

5.撮影した画像を自動保存する「ポケットアルバム」機能

もうDSC-M2いじめとしか思えません(笑)。3インチ23万ドットと2.5インチ12万ドットでは全然アルバムとしての綺麗さが違うんですけど。内蔵メモリは26MBです。

7.新バッテリ-「NP-BG1」使用で約300枚の長時間撮影が可能

これそろそろユーザーも声を上げるべきだと思うんですが、モデルチェンジするたびにコロコロとバッテリの形を変えてしまうのは止めて欲しいです。なんかこう無駄が多すぎだと思うんですが。

その他こちらも16:9モードや高速起動を売りにしています。Pシリーズでもそうだったんですけど、沈胴レンズの割に起動が速いのはCyber-shotのいいところですね。

というわけでこちらのN1、スペック的にはT9よりワンランク上のポジションを狙っているようですが、僕は逆にカメラ初心者の人におすすめしたいですね。タッチパネルオペレーションは非常にわかりやすいですし、光学手ブレ補正はなくとも、沈胴レンズによる明るさとベーシックな形が、初心者の方にも安心感を与えると思います。

 

今回発表の2機種で、Cyber-shotのメインストリームのこれからが明らかにされた感じです。屈曲のTと沈胴のN、この2本立てで他社の売れ線デジカメを挟み撃ちにする作戦ということでしょう。
これが安定的な人気を獲得すれば、よりSonyらしいぶっ飛んだデジカメも作りやすくなって来ると思います。

あとはその「ぶっ飛び」がどの方向に行くのか、「動画」か「回転レンズ」か、はたまた僕ら凡人には思いつかないようなすごいカメラが出てくるのか、しばらくおとなしかったCyber-shotにもようやく光が見えつつあるようです。


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コメント 12

floss

T9もN1もすごくいいカメラですね。akoustamさんの記事を読んでますます期待が高まるデジカメです。
あ、さっきはちょっと不機嫌そうなコメントしてしまいましたが、akoustamさんを悪く思ってはいませんからご安心ください(*^_^*)。T5を 10月に購入して、いいかというぐらい毎日使ってますから、T5にはすごく満足しています。人に、ひとしきり見せておいて 値段を答えたとき、みんな それは安いねといいますし(優越感)。いまならT5、割安です。   ・・・それはともかく。
どちらにするか迷いそうなT9とN1。さらにM2の動画機能も捨てがたい・・・。今買おうとしたら、相当悩みそうですね。1ヶ月でこんなに違う状況になるとは、です。(*^_^*)
by floss (2005-11-02 04:00) 

arkstar

やっと屈折光学系での光学手ブレ補正搭載ですね。
ISO640も同時搭載。
T9って次のTシリーズのスタンダードなんでしょうね。
他メーカー特に「沈胴レンズ+手ブレ補正」のみで戦ってきた松下、
「屈折光学系+手ブレ補正」で武装したT9はまさに、最も脅威に感じるでしょうね。
by arkstar (2005-11-02 11:42) 

akoustam

>flossさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

最近元気のなかったCyber-shotにやっと入魂の一作がやってきたってかんじですね。でもT5も別に悪いカメラではないんですよね、T7使っていてそう思います。特にデザインは抜きんでてますし。

N1、T9、M2だったらやっぱり僕はN1進めますかね。HC1持ってるふろすさんならおわかりいただけると思いますが、タッチパネルオペレーションはいいですよ。
by akoustam (2005-11-02 13:03) 

akoustam

>arkstarさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

転んでもただでは起きないというか、屈曲系初のアクティブレンズシフト型光学手ブレ補正搭載ですからね。Sonyの底力を見せつけたってところですね。
これで光学手ブレ補正の技術も特許ももってないメーカーは、どう対抗するのか悩むことになるでしょうね。
by akoustam (2005-11-02 13:07) 

ahtoh

おお~、詳細な分析お疲れ様です。
僕も過去のTシリーズとサイズを比較しようと思っていたら、見事に調べてくれましたね!
てっきり厚さはT1以上だと思っていました(笑)
by ahtoh (2005-11-02 14:26) 

akoustam

>ahtohさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

思ったより薄く収まってますねT9。でもT7に慣れた目には、松下のLUMIXすら「これを薄型と呼ぶな~」と感じられてしまうので、T9にも「薄型じゃね~」って叫んでしまうかも・・・
by akoustam (2005-11-02 19:27) 

trpper0512

えー、DSC-U30がぶっ壊れました。享年2.5歳。モニタが真っ黒で、シャッターは切れるのですが、真っ黒な画像が写るだけ、というものです。すでに撮った写真を見ることは可能です。で、買い替えを考えております。ポジションは副キャプテンです。メインはEOS KISS(アナログ)とDSC-S85を持っておるので、毎日の持ち歩き用として小型のんがほしいのです。ヤフオクで中古のU30が5000円程度で出品されているのを見て、これでもいいかなーと思ったりもするんです。新しい機種はMacOS8.6で読み込めないのでは?という心配もしております。アドバイスをいただければ幸いです。
by trpper0512 (2006-01-20 19:06) 

akoustam

>tripper0512さん
コメントありがとうございます。

ぐはっ、いきなり買い物相談されても・・・。

とりあえず予算と、重要視するファクターを教えて下さい、たとえば、

・軽くてちっこいのが一番。
・画質こそ最優先。
・バッテリー重視。

といったあたり。そら予算が許すならDSC-T9が一番おすすめですけどね(^^;)

MacOSは9.1以降にしか対応しない旨書いてありますね。検索してみましたが、古いメモリカードリーダライタで、在庫の残っているのを探すしか手はなさそうです。
by akoustam (2006-01-20 22:58) 

trpper0512

昨日T9をSony Styleで下見したところ、46800円だったかな?これだと予算内です。そうか、じゃあT9だな。ネットショップ、ヤフオクのほうが安いみたいなので調べてみます。U30をカードリーダーがわりにすれば何とかなるし。どうもありがとうございました。
by trpper0512 (2006-01-21 16:24) 

akoustam

>tripper0512さん
なんだ、予算はあるんですね。そしたら気軽に使うセカンド機にはT9が一番です。

EOSはちゃんと構えて、しっかりとした写真を撮るときに使い、セカンド機はぱっと取り出して使うスナップ用になるでしょうから、片手持ちとかでもぶれにくい光学手ブレ補正機能があるのが向いてます。
by akoustam (2006-01-21 21:00) 

tripper0512

遅くなりましたが、無事にご帰国おめでとうございます。
アドバイスいただいたT9、ヤフオクで無事購入しました。シルバーがほしかったんですが、間違えて黒を落としてしまうというミスをしでかしましたが、なんとかシルバーを手に入れることができました。(黒を同僚に転売)
まだ操作に不慣れな点がありますが、U30よりも室内撮影がキレイです。たぶんレンズの差ですね。送料込みで33000円だったのでいい買い物できたと満足しております。アドバイス、どうもありがとうございました。
by tripper0512 (2006-02-14 12:26) 

akoustam

>tripper0512さん
どもども、なんとか有傷ですが(無傷ではない)帰ってきました。でも最高に面白かったですよ。

T9手に入れたんですね!これであの人形を使っての世界旅行の写真も、手ブレしないでコレクションできそうですね。手ブレ補正は室内などの暗い場面で力を発揮しますから、写真の幅も広がると思います。ってか羨ますぃ。
by akoustam (2006-02-15 10:49) 

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