MOVIE & PRESTIGE [Sony・Cyber-shot]
既報の通り、Cyber-Shotの新機種が発表されました。
動画機能をメインに据え、ギミックとデザインを売りにするDSC-M2と、イメージセンサーに大型のCMOSを採用し、高画質路線を突っ走るDSC-R1、この対照的な2機種が同時に発表されるのが、いかにもSonyらしいですが、それぞれ見ていきましょう。
Cyber-Shot M DSC-M2
昨年、鳴り物入りで登場したMPEG-4動画デジカメDSC-M1が、女性向けのおしゃれデザインを与えられ、“ムービーサイバーショット”DSC-M2に進化しました。
スペック的にはM1と同じく、Tシリーズ用の屈曲光学系レンズ「バリオ・テッサー」を流用し、携帯電話ライクな回転液晶機構と組み合わせて、動画の「+movie」自分撮りの「+me」をアピールする戦略のようです。
前モデルのM1から変わったのは、
・撮影した写真や記録した動画を自動保存できる「ポケットアルバム」機能
メモリースティックとは別に本体内にメモリーを持ち、VGAサイズ(640×480)のサムネイル画像をそこに撮影と同時に保存することで、M2の液晶で見て楽しむだけなら撮るのに使ったメモリースティックなしで出来るという機能です。
M2の液晶は、Tシリーズ用のもの(2.5インチ23万画素=320×240サイズ相当)より安価なものが採用されており(2.5インチ12.3万画素=240×160サイズ相当)、たとえVGAの画像でも十分綺麗に見えるという計算なんでしょう。実際まわりの若い女性達が、携帯電話の画面をお互い撮った写真の見せっこに使ってるのはよく見かけますので、うまく訴求すれば活用してもらえる機能になるかもしれません。
・「音楽付きスライドショー」機能
デジカメでありながら、なんと本体内に4曲のBGMが内蔵されており、画像をBGM付きスライドショーにして見ることが出来るという機能です。
どういう形式かはわかりませんが曲の入れ替えまで出来るようで、これも写真をプリントせず画面をお互いに見せっこする、カメラ付き携帯電話の文化がデジカメにやってきたということなんでしょう。
・動画対応ブログ
これは本体の機能ではありませんが、我らSo-net blogユーザーには意外な驚きを持って迎えられたのではないでしょうか。
M2発売の10月21日に合わせ、So-net blogに「動画ブログ機能」が加わることになりました。320×240以下のサイズで、1ファイル1MB以内の動画が配信できるようになるとのことですが、これをどう活用していくか?僕らユーザーの力量も試されているようで、今から身震いします。僕はM2は買わないと思いますが、動画ブログはいつか挑戦してみたいなぁと思っています。ちなみにlivedoor blogも対応するそうです。
その他の機能はM1を継承しており、静止画のシャッターをきるとその前後8秒間の動画も自動的に記録してくれる「ハイブリッドRec」、やワンプッシュで5秒間の動画を撮影する「5秒Rec」も健在です。
またM1はビューワースタイルにすると、本当にビューワーとしてしか使えませんでしたが、M2はビューワースタイルでもシャッターが切れるようになっているようで、普通のデジカメとしての使い勝手も向上しているようです。
【9月17日、追記】ソニーディーラーコンベンションにて、ビューワースタイルではビューワー機能しか働かないことを確認しました。申し訳ありません。
総論としては、動画デジカメと言いつつも、カメラ付き携帯電話の使われ方をかなり研究しており、「自分撮り」「写真の見せっこ」にフォーカスして改良してきた感じです。
純粋にカメラとしての性能を見れば、値段のわりにゃあまり綺麗に撮れそうな雰囲気のないM2ですが、こいつはそんな理屈っぽい写真を撮るための機械ではないですね。とにかく思い立ったら動画でバンバン撮りまくる!残しまくる!、こういう「四の五の言わずに楽しくいこうよ!」なノリはSonyにぴったりなので、このカメラ僕は好きです。
Cyber-Shot R DSC-R1
既に米Sonyで七日に発表されていたので、その概要は伝わっていましたが、フラッグシップDSC-F828の兄弟機(どうもしばらくはF828も併売されるみたい)“プレステージサイバーショット”DSC-R1です。
F828が2/3インチ4色カラーフィルター800万画素CCDだったのに対し、R1はAPS-Cより少し小さい大判(計算してみたら1.06インチだった)1000万画素CMOSを採用してきました。有効画素エリアの面積比では、なんとF828の5倍の面積をもつそうで、画素サイズに余裕ができたのでISO3200(F828はISO800が最高)という超高感度撮影も可能になりました。
しかしレンズは7倍ズームから5倍ズームへ、F2.0-2.8からF2.8-4.8と暗くなるなど、コストダウンの余波を受けているようです。
既にコニカミノルタとの提携が動き出し、来年の夏をめどにDSLR(デジタル一眼レフ)に乗り出してくるSonyにとって、このR1のポジションをどこに置くか、かなり悩ましいところだと思います。
たしかにこの手の一体型は、一体型ならではのDSLRとは違ういい面もあるのですが、お客さんが買ってくれなければ商売として成り立たないわけで、コンパクトで満足できない人をステップアップさせるのか、DSLRのローエンドユーザーを切り崩すのか、これからのSonyの手腕が見物です。
この年末商戦向けのCyber-Shotのモデルチェンジ、とりあえず8月発表のT5と合わせ、これでいったん終了のようですが、Sonyがかつての元気を失っている、売れ筋のメインストリームをどうテコ入れするのかがまだ見えてきません。
そもそもなんでSonyが売れなくなったのか、おそらくほとんどの方がこのキーワードを掲げるでしょう『手ブレ補正機能』と。今や手ブレ補正がなければ高画質に撮れないという信仰めいたものまで、市場ではできつつあります。
現在Sonyのコンパクトデジカメの主力になっているTシリーズ。こいつが採用する屈曲光学系レンズは全体に暗く、カタログスペック用の高画素化のため狭小化し、弱い光に対する感度が低下しているCCDと合わせ、ちょっとでも暗いシーンになると、とたんにスローシャッターになってしまうので、いとも簡単に手ブレを起こして、画質低下を招いてしまうことになります。
これを克服するためにも「手ブレ補正機能」の搭載が待ち望まれているわけですが、個人的には手ブレ補正は最後の最後に頼る手段にすべきだと思います。富士フィルムのF10がそうですが、イメージセンサーを高感度対応にし、明るいレンズを搭載すれば、必然的に速いシャッタースピードで切れるようになり、補正機能がなくても手ブレも被写体ブレもまとめて解決できます。
カメラの本質を追究するなら、この「シャッタースピードを上げる」やりかたの方が王道ではないでしょうか、「補正」はしょせん「補正」でしかなく、根本的な解決策ではないのですから。
とここまで書いて、常々疑問に思っていたことにぶちあたりました。
「果たしてSonyがスチルカメラの本質や王道を追求する必要があるのか?」ということに。
そもそもCanonやNikon・MINOLTA・PENTAXのような銀塩カメラメーカーじゃないSonyが、何でデジタルスチルカメラをやってるのか、元をたどっていくとビデオカメラに行き着きます。つまりビデオカメラのために開発してきた技術を流用して、スチルカメラにも乗り出してきたというのが、Cyber-Shot(その祖先たるMavica)の歴史の出発点なのです。
どんなに高度なCCDやビデオ処理の技術を持っていたとしても、「カメラをつくる」ということに関しては、長い歴史を持つ銀塩カメラメーカーに一日の長があることは否定できません。だからこそ以前のCyber-Shotはレンズ回転機構のFシリーズや、レンズはカメラの中央にあるものという常識をひっくり返したPシリーズなど、王道ではなく覇道(もしくは邪道)を突き進むぶっ飛んだカメラを市場に問うことで、「面白いカメラメーカー」というSonyのポジションを獲得してきたのだと思います。
ところが覇道だったはずのPシリーズが、なんと他のメーカーを押しのけてメインストリームに躍り出てしまい、あろうことかCanon・Kodakと並ぶデジカメのトップメーカーになってしまった。これがSonyの苦悩の始まりです。
PDAのCLIEもそうでしたが、覇道というのは本来王道を歩んでくれる手堅い存在がいてくれることで、その異端の力を見せつけることができるもの、それがなんと自分自身が王道になってしまったのです。
こうなるとSonyのカメラ作りは、変質せざるをえなくなります。市場からは王道を行くメーカーらしく、無難だが優秀で手堅い出来の「いいカメラ」を作ることが求められる、でもSonyは「面白いカメラ」を作るアイデアはあっても、「いいカメラ」を作るための歴史の蓄積はない。これではどうすればいいのか、Sonyも自分の居場所を見失ってしまうわけです。
このSonyの迷走をどう解決するか?僕としては、思い切ってSonyは王道を捨て「デジタルカメラの世界トップメーカー」の座を降りてしまえばいいのではないかと考えます。王道を歩んだところで、そこにはCanon・Nikonのような強力なカメラ技術を持ったメーカーがおり、無難な売れ筋高画質カメラを投入しても太刀打ちできるとは思えません。
であれば市場としては大きくないが、「何かすごそう」「何か面白そう」といった強力なブランドイメージを作れるカメラを目指すべきでは無いかと思うのです(ただしそこには今度はCASIO・Panasonicといった別の強力な存在がいるわけですが・・・)。
さて来年出る予定のSony製DSLRですが、開発を担当するのは“ムービーサイバーショット”DSC-M1/M2を送り出してきた、パーソナルオーディオビジュアルネットワークカンパニー デジタルイメージング事業本部 FR事業部が、同AMC(Alpha Mount Cameraの略らしい)事業部に生まれ変わって行います
これこそSonyが「Sonyらしいぶっ飛んだカメラを作るぞ」と宣言した証ではないでしょうか。MPEG-4動画デジカメを出してきたチームが全く正反対のDSLRを作る、さぁどんなモノが出てくるか。
今回のCyber-Shotについては、以下のエントリーをお読みいただくのがおすすめ
ソニー、cyber-shot 「DSC-M2」「 DSC-R1」を発表 (Sony好きが語るblog)
【追記】画像を追加し、見やすさを改善しました。
ふろすです。遅い時間まで お疲れ様です。
>この年末商戦向けのCyber-Shotのモデルチェンジ、とりあえず
>8月発表のT5と合わせ、これでいったん終了のようですが・・・
そ、そうなんですか。これ以外のサイバーショット、出ないんですか。
pは?Lは?・・・
ソニーはデジカメで思わぬ1位になってしまったというお話、おもしろかったです。だからだんだん「おもしろい」デジカメが出なくなっていたのかぁと妙に納得しちゃったりしました。
今、自分は、T5買うかどうか悩んでいます。この秋、ソニーから魅力的なデジカメが出るかどうか見極めてから、買おうと思っています。
って自分、候補がサイバーショットだけだー。
まあ、ともかく、早く手ぶれ補正つけてほしいです。
by floss (2005-09-14 05:19)
>ふろすさん
ナイス投票ありがとうございます。
Cyber-Shotのモデルチェンジは変則的なので、今後どうなるかわかりませんが、
PはTにバトンタッチ、Lはどうやらその路線には市場は存在しなかった(CanonのIXY Lもだめでしたね)ということで、両機種ともフェードアウトの方向のようです。
今回のエントリーには僕の中にある、
「売れる商品ではなく、面白い商品をだしてこそのSonyじゃないか」
という思いも入ってます。
新経営陣も「テレビ・Blu-ray・ウォークマンがSonyの中心事業だ」と表明してますし、
どうせSonyの中でも非主力事業なら、Cyber-Shot部隊には、もっとぶっ飛んで欲しいんですよね。
by akoustam (2005-09-14 10:20)
akoustamはじめまして。
>M2はビューワースタイルでもシャッターが切れるようになっているようで
にnice!です。
ソニーはカタログにちゃんと明記しなさい!!!
by (2005-09-15 00:10)
私の方からもTBさせてもらいました。
確かに手ブレ補正のインパクトは強いですよね~。
実際、高感度の方が、被写体ブレまで抑えられるわけですけど、
「手ブレ補正」という言葉を入れた方が、ひきが強いですね。
あとLシリーズは失敗しましたね。私は前タイプのUを持ってるんですが
Uの方が割り切りが良く、今も毎日持ち歩いてます。
Lじゃなく、Uを続けていれば良かったのに・・って思います。
by はまちゃん (2005-09-15 00:50)
>ふろすさん
CanonのIXY L、それほど売れてなかったんで、消えるもんだと思ってたら、
今日モデルチェンジ発表しましたね。失礼いたしました(^^;)。
それにしても、なんかオシャレじゃなくなってるぞ、IXY L3
by akoustam (2005-09-15 04:31)
kotatoさん、はじめまして&ナイス投票ありがとうございます。
すいません、ビューワースタイルでの撮影ですが、
まだSonyに正確な情報は聞いておりません。
ソニースタイルのこのページから、たぶんできるだろうと考えているのですが、
http://www.jp.sonystyle.com/Product/Dsc_mvc/Dsc-m2/Photo/02.html
これからよろしくお願いします。
by akoustam (2005-09-15 04:34)
>はまちゃん
TBありがとうございます。
Lは何が悪かったんでしょうね。デザインもレンズ性能もそこそこ良かったんですけどね。
ヨン様の呪い?(笑)
やっぱり、Sonyにしちゃオーソドックスすぎたんでしょうか。
Uシリーズの方が、遊び心がありましたから。特にU60。
by akoustam (2005-09-15 04:36)