ベトナム人気質 [ベトナム縦断自転車旅行記]
昨日泊まったホテルは、またもや国道1A号線沿いにあるローカルビーチのための小さなホテルでした。
無線LAN環境も無く極めて素朴な宿泊場所だったわけですが、おかげで朝もすぐに国道を走り出すことが出来ます。
今日も走れるだけ走って行く日。朝の1時間ほど走ったところで、この旅初の検問にひっかかります。
社会主義国ですから官憲にあたる人がやたらと国道を走り回り、バスやトラックを検問している姿を一日一回は見てきたのですが、僕自身が呼び止められたのは初めて。
と言っても官吏さん英語がしゃべれるようで、
官「(ベトナム語で)○×△」
あ「????」
官「(英語で)どこから来た」
あ「日本」
官「ハノイに行くのか?」
あ「うん」
官「今日はどこまで?」
あ「ビン」
あ「あ、パスポート見る?」
官「うむ」
あ「ここにベトナムビザもあるよん。ちゃんと期限内だかんね」
官「たばこでも吸って休まんのか?」
あ「僕、ノースモーカー」
官「じゃあコーヒーでも飲まんか?」
あ「うんにゃ。先急いでるので行っていい?」
官「いいぞ」
というようなやりとりで終了。周りのベトナム人ドライバーもニヤニヤしながら見てましたが、至ってあっさりと終わったので拍子抜けしてしまいました。
その後は向かい風が弱いこと利用して、どんどんと進んでいき、80Km走ったハティンの街でお昼ご飯。
ちょうどコープマートが街のど真ん中にあったので、
そこのフードコートへ。
それより街のコム飯屋のほうが旨くて安そうですが、ここは何と言っても明朗会計の上に、値段も安いので意外と重宝します。
これで35000ドンはなかなか(街中だと値段交渉しないと50000ドンとか取るレベル)。
そこから残りの50Kmを走ることにしますが、ベトナム北部に来たというのに、何故か日射しも気温も南部並になってきました。これは暑い…
仕方ないので、カフェでコーヒーを飲みながら16時過ぎの日射しが弱まる時間まで待機します。
残りは20Kmほどだったので、暗くなる前に目的地のビンには着けるなと思っていたのですが、
ここで一人のベトナム人ローディー(ロードレーサー自転車に乗る人)に追い越されます。
「ハロー」
自転車乗りというのは、何故か走っていると意思疎通が自然に図れる人種で、彼は僕がビンを目指して走っていると見抜いて、先導しながら引っ張っていってくれるようです。
ここで少しベトナム人の気質の話をすると、ホーチミンのような南部は経済発展も著しく、メコンデルタなどで外国人観光客も多いからか比較的外国人慣れしており、僕が走っていても子供達の「ハロー」という挨拶はまばらで、あまり関心をしめされることはありませんでした。
これはベトナム中部も同じで、フエ・ホイアン・ダナン・ミーソンと観光地を多く抱えた地域でこれまた外国人観光客が珍しくないため、子供達の「ハロー」という挨拶も南部より少し増えましたが、あまり過激な行動を取る人はいませんでした。
しかしフエを出て北に向かってから状況が一変します。
僕のここ数日の記事のノリでもおわかりいただけていると思いますが、フエからハノイまでの600Kmほどの間は、外国に知られた大きな見所が存在せず、ほとんどの外国人観光客はこの地域をバス等で素通りします。
なので子供達も外国人が珍しいのか、普段見かけないスポーツ自転車で高速に走って行く人間が新鮮なのか、僕を見つけると必ずと言ってよいほど大きな声で「ハロー!ハロー!」と挨拶をしてきます。しかも大人も素朴な人が多いのか、バイクで併走してきたり、自転車で併走してきたりスピード競争を仕掛けてくる男子中高生も後をたちません。
彼らに悪気が一切無いのはわかるのですが、ただでさえ大型トラックやバスのひどい交通マナーの中で走らなくてはいけない状況なのに、至近距離で意思疎通の図れない人にバイクや自転車で併走されるとなると、いつ接触事故になるかもしれず、やむを得ず手振りで「併走しないでくれ」という合図をすることになります。
そんなベトナム北部ですが、今出会ったこのロードレーサー乗りの人は、さすがスポーツ自転車乗りだけあって、まるで僕の意志を把握しいるかのように適度なペースで引っ張りながら、うまくバスやトラック、牛(笑)をよける指示を前で出してくれます。
脚力も明らかに僕よりあるようで、この向かい風の中、前で引っ張るのを苦ともしていない感じです(僕も94年の北海道で男二人協力して、一人の女の子自転車乗り(滝川市の学校の先生だったなぁ)を引っ張る役をしたことがありますが、先頭で引っ張るのは本当につらい)。
おかげで最後の15Kmはあっという間、無事にビンの街に到着です。
しかもわざわざ安ホテルの前まで連れてってくれて、最後は二人でホテル併設のカフェで冷たいお茶までいただきます(笑)
そして、僕は飲んでる最中から確信していました。
「彼は必ずここのお茶代を出そうとする」と。
案の定僕が彼の目を盗んで店員に支払おうとすると、その行動を察知し「全部払う」と頑なに僕が払うのを拒みます。
結局僕が根負けし彼にお茶代を払ってもらうことに…
何故彼が僕におごると確信していたかというと、ホイアン手前で出会ったリン君も、あのとき同じ行動に出ていたからです。どうもベトナムの人は仲良くなったら奢るという気質があるようで。
そして寡黙な人が多い自転車乗りらしく、彼は僕に名前も告げずに握手をして、そのままロードレーサーでビンの近くらしい自宅に帰っていきました。
このベトナムでGIANTのロードTCR、シマノ105、マビック・コスミックホイールというロードレーサー(おそらく20万円ぐらい。スポーツ自転車はベトナムだからといって安くなるわけではない)に乗るぐらいですし、おそらく彼もベトナムの中ではかなりの富裕層に属する人だと思います。
しかし全然そんなそぶりも見せず、素直で、明るく、気の優しい、ベトナム人の気質を見せてもらった感じです。
彼がこのBlogを見ることはあり得ませんが、あえてここでもお礼を言っておきます。
「今日はありがとう」と。
ということで無事にホテルも決まったので126Kmの走行は完了。
夕飯は目の前にある料理店で鍋のメニューがあったので「Lau Bo(ラウ・ボー=牛鍋)」を注文。
ビールはフエのビール「huda(フーダ)」。氷で冷やすビールもすっかり慣れました、
そういえばこのビール「ダニッシュ・テクノロジー」と書いてあるので、デンマークのビール技術が入っているようです。
肝心の牛鍋はだし汁にニンジン・トマト・サツマイモ(?)・タマネギ等がたっぷり入っていて、かなり僕好みの感じ。
これを生姜と唐辛子のつけだれでいただきます。
どうみても2-3人用メニューで。1人で食べるもんではありませんでしたが(笑)僕一人で美味しくいただいて、夕食も完了。
またまた霧がかかるベトナム北部ビンの夜は更けていきます。
コメント 0