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8年前に外されたのは本当に「最後の砦」だったのか。 [その他もろもろ]

あの震災が発生してから3ヶ月、個人的な日記として「ボランティア日記」はつけたものの、やはりIt's a ...はデジタルガジェットをテーマとしたBlogであるということで、原発関連の話題に触れるのは、僕個人のtwitterだけに留めてきました。

しかし今回どうしても見過ごせない話が出てきたので、この話はBlogに書き記しておくことにします。デジタルガジェットの記事を期待している読者の皆さん、ごめんなさい。興味のない方は今回は読み飛ばしていただけると幸いです。

 

で、その見過ごせない話とは何か、民主党の原口一博議員が、6月2日に記者会見を開いて指摘したこの話。

「福島第一原発の安全装置は8年前に外されていた」原口氏が衝撃の告発(BLOGOS)

記者会見のUSTERAM

福島第一原発 削除されていた蒸気系凝縮機能(原口議員のFacebookページ)

何と「福島第一原子力発電所(以下F1原発)で、平成15年の自民党政権の時代に、ECCS(非常用炉心冷却装置)の中の冷却系の蒸発システムが取り外されていた」というのです。

しかし、今までの東電の発表資料を見ても、各社の報道を見ても、「ECCSが電源喪失で機能しなかった」という話はあっても、「ECCSの一部が取り外されていた」などという話は聞いたことがありません。そして、これが事実であれば重大なエラーであるにもかかわらず、今の今まで全く話題になっていない、何とも不思議な話です。

果たしてそれは本当なのか、

幸い原口議員が、「平成15年原子力安全委員会第10回定例会議」「平成15年原子力安全委員会第29回臨時会議」という、元ネタを指摘してくれているので、すぐに問題の会議録を読むことが出来ました(原子力安全委員会はきちっと情報開示するところのようで、過去30年分の会議録が全部ネットで見られるようになってます)

平成15年原子力安全委員会第10回定例会議(原子力安全委員会)

平成15年原子力安全委員会第29回臨時会議(原子力安全委員会)

なるほど確かに第10回の会議で、東電から「残留熱除去系の蒸気凝縮系機能削除」の申請がされ、第29回の会議でそれが認可されているのがわかります(原子力発電所の配管変更など設備変更は、全て国に許可をとらないといけない)。

では、何故この「機能削除」が行われたのか。

これも原口議員のFacebookに答えが書いてありました。

>「当時、浜岡原発で事故があり、それを受けて取り外した。」との証言を得ました。

この“浜岡原発の事故”とは、問題の機能削除が申請される2年前、平成13年11月7日に中部電力浜岡原子力発電所1号機で起きた配管破断事故のことです。そしてこの事故の最終調査報告書も、原子力安全委員会のサイトに誰でも見られる状態で公開されています。

中部電力株式会社浜岡原子力発電所1号機における配管破断事故について(最終報告書)

この事故報告書で再発防止策に触れた54ページ、項目7.2「余熱除去系蒸気凝縮系配管に対する措置」に、こういう記述があります。

>蒸気凝縮系はこれまで運転実績がないこと、当該系統を用いなくても主蒸気逃がし安全弁及び原子炉隔離時冷却系によって原子炉の崩壊熱の除去が可能であること、また最近のプラントでは設置されていないこと、さらにはリスク評価により蒸気凝縮系を設置している場合と撤去した場合にリスクが、ほぼ同等であるという結果が得られていることから、当院としては、事業者が再発防止対策として当該機の余熱除去系蒸気凝縮系配管を撤去することは妥当なものと判断する。

さらに項目7.3「まとめ」には

>当院としては、中部電力(株)を含めBWRを運転している電力会社に対し、次のような対策を求めることとする。
(中略)
・余熱除去系蒸気凝縮系については、再発防止対策として同等の効果を持つものとして、この系を撤去するか又はこの系の配管の分岐部に弁を設置するかのいずれかの措置をとること。

なるほど確かに、この機能削除は「浜岡原発の事故調査の結果、同様な事故の再発防止のために原子力安全・保安院側から、浜岡1号機と同じ構造の原子炉を持つ電力会社に求められた」から、東電が行ったというのが真相のようです。

そうなると「安全のために安全装置を外したの?」という疑問が当然湧いてくるわけで、まずこの「残留熱除去系(PWRでは余熱除去系と言う)蒸気凝縮系機能」とは何かから調べていきましょう。

 

■そもそも「余熱除去系蒸気凝縮系」とは何をするものなのか

実はこの答えも浜岡1号機事故の最終報告書10ページに書いてあります。

>余熱除去系蒸気凝縮系は、原子炉をタービン発電機から隔離し高温待機状態に維持する必要が生じたときに用いるものであり、これにより再起動に要する時間を短縮することができる。
「余熱除去系は、原子炉停止時の残留熱を除去する目的で設置されている。ポンプと弁の切り換え操作により運転モードを変え、停止時冷却系、低圧注入系、格納容器冷却系及び蒸気凝縮系として利用できるようになっている(途中省略)このうち蒸気凝縮系は、蒸気を主蒸気ラインにより高圧注入タービン用蒸気管を経て、余熱除去熱交換器の胴側に減圧して導くこととしており、蒸気は熱交換器の管側を通る冷却水により、凝縮され冷却される」

またWeb検索をかけると、こんな用語辞典も出てきます。

残留熱除去系(Weblio) 

ということで、何らかの理由で原子炉本体とタービンを切り離して(これを原子炉隔離という)、原子炉本体を「高温待機状態」で運転停止させるときに、圧力容器内の圧力と温度を制御または減少させるための機能が「余熱除去系蒸気凝縮系機能(蒸気凝縮モード)」だということです。

原子炉を隔離して高温待機状態にさせるとはどういうことか。

これはおそらくタービン(発電機)に近いところで配管破断などのトラブルが生じたときに、原子炉とタービンの蒸気の流れを弁で切り離すのですが、そこで原子炉を完全に冷温停止にしてしまうと再起動に時間がかかるため、長期間にわたって発電が出来ない状態が続くのを防ぐよう、クルマで言う「アイドリング」のような状態にしておくことだと思われます。

しかしそんな中途半端な状態が必要になる類の事象は、日本国内では一度も起こったことがないようで、浜岡の事故報告書にも「当該機でこの機能の使用実績無し。他の発電所も使用実績無し」ということが記述されています。

 

■撤去されたのは非常用炉心冷却装置(ECCS)なのか

原口議員のUSTを見ると「8年前に撤去されたのはECCSの一つである」という主張が出てきます。このECCS(緊急炉心冷却装置)というのは、BWRでは

・高圧炉心スプレイ系(HPCS)
・低圧炉心スプレイ系(LPCS)
・低圧注水系(LPCI)
・自動減圧系(ADS)

という四つの系統により構成されるもので、浜岡原発1号機や女川原発1号機、そしてF1原発の2~5号機が採用する「BWR-4」型原子炉では、高圧炉心スプレイ系が高圧炉心注水(注入)系(HPCI)という名称で取り付けられています。

ここに余熱除去系という名前は出てきません。

では余熱除去系はECCSでは無いのかというと、それも少し違いまして、上記の浜岡事故報告書にも記述があるとおり、余熱除去系は四つの使用モード切り換えながら使うもので、そのモードの一つ「低圧注入モード」にしたときは、ECCSの「低圧注入系」機能として動作することになります。

ということは一体何が撤去されたのか、東電が出した申請書の図を見てみましょう。

WS000001.JPG

撤去されたのは、この図の赤いラインの部分です(色はわかりやすいよう筆者が加筆しました)

ここでポイントとなるのは、撤去されたのが配管だけで、残留熱(余熱)除去系熱交換器は「機能削除の対象外」とされていること。

どういう事かというと、この熱交換器こそが「残留熱(余熱)除去系」と呼ばれるシステムの根幹で、この熱交換器にどの系統の蒸気を繋いで使用するかで、その四つの動作モードが切り換わるようになっているのです。

なので、簡易図ではなくもっと詳しい水と蒸気の流れを示した図になると、

BWR概略フローシート(原子力資料情報室:GIF)

WS000000.JPG

(色は筆者が加筆。色の意味は東電の申請図と同じで赤いラインが撤去された部分)

左下にある残留熱除去系(RHR)熱交換器には、蒸気凝縮系だけでなく、色々な配管が接続されているのがわかります。 

つまり撤去されたのはECCSではない「蒸気凝縮系配管」であって、ECCSの一つ低圧注入系を構成する「低圧注入系配管」+「熱交換器」は何もいじられていない、撤去されていないというわけです。

 

■蒸気凝縮系は「最後の砦」だったのか

原口議員が「蒸気凝縮系」の撤去を問題視しているのは、「蒸気冷却システムがあれば、電源が失われても、それが水を循環させて原子炉が冷えるはずだった」と考えているからです。それが「最後の砦だった」と。

しかし余熱除去系蒸気凝縮系で蒸気を水に戻しているのは「熱交換器」です。

ここで中部電力の余熱除去系の説明図を見てみましょう。

余熱除去系・原子炉機器冷却系(中部電力)

このように余熱除去系の熱交換器は、原子炉から出てきた熱(熱い蒸気)を、海からくみ上げた水を冷却水として利用することで冷やしています。この海水をくみ上げているのは電源の必要な電動ポンプなのですから、F1事故のように電源が完全に失われてしまったら、この熱交換器は作動しなくなります。

つまり「電源を失っても炉を冷やすことが出来る最後の砦」では無いということです。

いったい原口議員は何と間違えているのか。

蒸気の力を利用して、電源が無くても作動する水循環システムは、余熱除去系とは全く別のもの「原子炉隔離時冷却系(RCIC)」と呼ばれるものです。

WS000001.JPG

東電の申請図で言えば今度は水色と紫色のライン。これが原子炉隔離時冷却系になります。

圧力容器から出てきた蒸気(水色のライン)は、タービンを回し、サプレッションプール(圧力抑制室)で水に戻されます。そしてそのタービンに繋がったポンプが駆動することで、サプレッションプールと復水貯蔵タンクから水を吸い上げ(紫色のライン)、圧力容器に水を注入するという仕組みです。

東電の記録によると、F1原発2号機のRCICは地震から16分後の15時2分、3号機のRCICは地震から20分後の15時6分に、手動で起動されたということになっています(1号機は構造が違うため蒸気凝縮系もRCICも最初から無く、非常用復水器(IC)が電源喪失時の循環システムとなる)。

このRCICが、F1原発で思った効果を上げなかった理由は今のところ不明ですが、弁がうまく動作しなかったのか、循環(冷却)能力に限界があったのか、事故が落ち着いてからの詳しい検証が待たれます。

で、繰り返しますが、撤去されたのは赤いラインに塗った蒸気凝縮系配管で、原口議員言うところの「最後の砦」にあたる、原子炉隔離時冷却系(RCIC)は全く撤去されていません。原口議員は4月3日に東電に乗り込んで、設計図を前に「蒸気系のシステムがあるはずだ」と問い詰めたらしいですが、ちゃんと東電側の説明を理解していたのか、甚だ疑問です。

 

■蒸気凝縮系は何故「撤去」されたのか

浜岡1号機の事故調査書にある蒸気凝縮系機能「撤去」の理由は、既に書いたとおり

「主蒸気逃がし安全弁と原子炉隔離時冷却系(RCIC)で、同じ機能を実現できるし、確率統計にのっとって、蒸気凝縮系機能があった場合と無かった場合のリスクを計算したら、あっても無くても炉の安全度はほとんど変わらないという結果だった。しかもこの機能は過去一度も使われたことが無く、最近の炉にはそもそもこの機能が無い。ならば撤去してもいいでしょ」

というものでした。

この事故報告書に基づいて、浜岡原発1号機と同じ「BWR-4」型原子炉と、同じく蒸気凝縮系配管を持った一部の「BWR-5」型原子炉(F1原発6号機、東海第二原発など)に対して、蒸気凝縮系機能の撤去、もしくは隔離弁設置作業が行われたのです。

なお、東電の撤去作業申請がF1原発2号機~6号機になっていて、1号機が申請されていないのは、1号機が蒸気凝縮系を持たない「BWR-3」型原子炉だからであり、申請書には撤去の理由として、浜岡の事故報告書とほぼ同じ内容が記述されています。

しかし僕は表だって記述されてはいないものの、撤去にはもう一つ重大な理由があったと睨んでいます。

それは浜岡の事故報告書の冒頭。

>破断配管の隔離に伴い非常用炉心冷却系の一部である高圧注入系が使用できなくなった

という部分です。

そもそも浜岡1号機の事故は、ECCS(緊急冷却装置)の一つである「高圧注入(注水)系」の起動試験を行った際に、蒸気凝縮系の配管が水素爆発で破断し、放射性物質を含んだ蒸気が原子炉建屋内に漏れた、という事故です。

蒸気凝縮系の配管が破断したら、なぜ別の系統である高圧注入系が使用できなくなったか、もう一度東電の申請図を見てみましょう。

WS000001.JPG

赤ラインが撤去された蒸気凝縮系配管、緑ラインが高圧注入(注水)系配管です。

このように実は蒸気凝縮系配管は、高圧注入系配管から途中で分岐されて熱交換器に繋がっているものなので、蒸気凝縮系配管が破断して蒸気が漏れ出したことで、元配管が共通の高圧注入系配管も弁を閉じて圧力容器から隔離することになって、ECCSの一つである高圧注入系が使えなくなったのです。

しかも浜岡事故報告書8ページには、他の発電所の状況が記載されており、F1原発の6号機や東海第二原発では、高圧注入系(HCPI)ではなく原子炉隔離時冷却系(RCIC)と元配管が共通になっています。

つまり、蒸気凝縮系配管で破断事故が起きると、ECCSの一部やRCICなど、まさに原口議員言うところの、「最後の砦」が動かなくなってしまう可能性があったわけです。

一度も使われたことがなく、安全性にほとんど関係が無い蒸気凝縮機能が破断事故を起こすと、ECCSやRCICなど本当の緊急安全装置を使用不能にしてしまう可能性があるので、その可能性を潰すため。

これが原子力安全・保安院が、余熱除去系蒸気凝縮系配管を「撤去せよ」と結論づけた、真の理由ではないでしょうか。

原口議員は「8年前に安全装置(ECCS)を撤去した」と政府・東電を糾弾していますが、「安全装置(ECCS)を使用不能にする可能性を持った部分を撤去した」となれば、その話は180度変わってきます。議員は原子力安全委員会の議事録を何度も読んだそうですが、一番肝心の浜岡1号機事故報告書はちゃんと読んだのか、疑問は尽きません。

 

■何故今この話が出てきたのか

僕はただの一国民ですので、原口議員が何を意図して、今のタイミングでこの話を出してきたのかはさっぱりわかりません(なにせ東電を訪れたのは二ヶ月も前の4月3日だとしている)。ただ言えることは、

・6月2日発売の週刊文春6月9日号に「福島原発内部文書入手!非常時冷却システムを撤去した勝俣会長」という記事が載った。
・その記事を書いたのは自由報道協会の上杉隆である。
・同じ6月2日にその自由報道協会主催で、原口議員のこの件に関する記者会見が開かれた。

ということです。

 

■浜岡の事故報告書を読んで

最後に、今回の件で浜岡の事故報告書を子細に読んだことで、おぼろげながら分かってきたことがあります。

原発で重大事故が起こるとすれば、チェルノブイリ原発のような「反応度事故(RIA)」か、スリーマイル島のような「冷却材喪失事故(LOCA)」であり、それが起きたときにどうやって抑え込むかが、原発の安全装置の主目的とされてきました。

(何らかの原因で)事故が起こった!→(電気の力を利用した)安全装置・制御装置を使って事故を抑える

という順番で対処することを想定して、何重もの装置が張り巡らされ、訓練や起動試験がされていたのです。実際、浜岡の報告書も「○○が起きたが、××で対処出来た。○○が起きても、××で対処出来る。」という文言のオンパレードです。

しかし今回のF1原発事故は順番が逆になりました。

(電源が全部失われて)安全装置・制御装置が動かなくなった!→(その結果として炉内の水が失われて)事故になった

という流れだったのです。

この逆パターンをほとんど想定していなかったことが(全電源が失われても何時間後までには復旧すると想定していた等)、事故をここまで拡大させた遠因ではないでしょうか。

人間の作るモノである以上100%安全はありえないが、100%に近づける努力を怠ってはならない。原子力関係の人々には、もう二度とこのようなことが無いよう、しっかりしていただきたいものです。

 

【6/8追記】

今朝になって原口議員がこんなツイートをしています。

>私が問題提起した蒸発系冷却システムの削除について「代議士、騙されてはなりません。あれは盲腸のようなもの。取り外しても全く問題ないものだったのですよ。」という方がおられました。しかし、ベントそのものの機能も後から加わった機能です。しかもベントは放射能拡散の危険を伴います。

そういえば6/2の記者会見を報じたBLOGOSの記事でも

>なぜ、そんなことをしたんでしょうか。「ベントするから大丈夫」というんです。皆さんご存知のように、ベントは放射能を原子炉から出すことですが、「放射能を出すから、安全冷却システムがいらないんだ」という理屈だったようです。これは全く理解できません。

と言ってますから、どうも議員が4/3に東電に乗り込んだとき、「ベントするから大丈夫」と言われたことが相当引っかかっているようです。

では、東電の担当者は本当に「ベントするから大丈夫」と言ったのでしょうか。

 

■蒸気凝縮系とベントは関係がある?

ここでもう一度浜岡1号の事故報告書の54ページを振り返ってみましょう。そこには

>蒸気凝縮系はこれまで運転実績がないこと、当該系統を用いなくても主蒸気逃がし安全弁及び原子炉隔離時冷却系によって原子炉の崩壊熱の除去が可能である

と書いてあります。また東電のF1原発2~6号機の設置変更申請時にも、安全性審査書類5ページには、その理由として、

>蒸気凝縮系の機能を削除しても、原子炉の崩壊熱等により発生する蒸気を逃がし安全弁によってサプレッションプールへ放出し、この時の原子炉水位を復水貯蔵タンク及びサプレッションプール水を水源とする原子炉隔離時冷却系により維持することが可能である。

とほぼ同じ内容が記述されています。原子炉隔離時冷却系(RCIC)が蒸気凝縮系の代わりになっていることは既に上で書きましたが、もう一つの「主蒸気逃がし安全弁」とは何でしょう。

主蒸気逃がし安全弁とは、非常用炉心冷却装置(ECCS)の一つ「自動減圧系(ADS)」に属する装置で、圧力容器内の水位が下がり、ドライウェル(格納容器の一部)圧力が上昇したという信号を感知するとこの弁が開き、圧力容器内の蒸気を直接サプレッションプールへと逃がすようになっています。

僕が原子力資料情報室から持ってきたBWR概略フローシートには、何故かこの自動減圧系のフローが載っていませんが、それが載っているバージョンの図を見つけてきた方がいらっしゃるので、それを拝借しますと、

img_1041797_28545249_1.jpg

(僕と同じように図に色をつけてくれてまして、ここでは赤いラインが自動減圧系配管。圧力容器左に主蒸気逃がし安全弁があります)

このように原子炉隔離時冷却系(RCIC)とほぼ同じ蒸気凝縮の機能を持ちながら、自動減圧系はタービン等一切なく、直接蒸気がサプレッションプールに行くようになっているのがわかります。

そしてこの自動減圧系は、ただ蒸気を逃がして“圧力容器内の”圧力を下げるだけで水の注水は行わず、RCICや他の非常用炉心冷却装置と協調して動作することで、初めて原子炉を冷却出来る装置ですから、浜岡の報告書でもF1の審査書でも「逃がし安全弁と原子炉隔離時冷却系」と、二つ並べて蒸気凝縮系の代わりになるとされているのです。

一方の「ベント」は3/12の各社一斉報道以来、すっかり国民に定着してしまった感がありますが、格納容器内の圧力が高まって容器損傷の恐れが出てきた時に、“格納容器内の”気体を大気中へ排気放出する行為のことを「ベント」と言います(この時放射性物質が環境に放出されるのを極力抑えるために、フィルタを通します)。

このように「主蒸気逃がし安全弁(ECCSの自動減圧系)」と「ベント」は全く異なるモノです。

 

で、4/3に原口議員が東電に乗り込んできたときに、東電の担当者さんは「何故蒸気凝縮系が削除されたのか」と聞かれて、教科書通りに答えたのでしょう。

「主蒸気逃がし安全弁と原子炉隔離冷却系が蒸気凝縮系の代わりになるので」

と。それが浜岡の事故報告書で撤去を指示した理由、かつ東電が撤去した理由なのですから。

ところが原口議員は「主蒸気逃がし安全弁(自動減圧系)」と「ベント」の区別が付いていないので、「『ベントをするから蒸気凝縮系が無くても大丈夫』というのは全く理解できない」という、頓珍漢な記者会見に繋がっていくわけです。

まぁ、その、何というか…ここまで来たらハッキリ書いてしまいますが、典型的な「何も知らないのに、知ったかぶりで怒鳴り込んでくる、困ったちゃんクレーマー」だったわけですね、原口議員は。

国会議員なんですから、もうちょっとしっかりしていただきたいものです。


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