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MacBook Airに見るAppleの“演出力”と日本の“肥大化癖” [気になるモノ・コト]

日本時間10月21日午前2時より、Appleのイベント「Back to the Mac」が行われ、長らく大きなモデルチェンジが行われていなかったMacBook Airが、ついにフルモデルチェンジを果たしました。

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MacBook Air (apple.com/jp)

今まで13インチのワンサイズだけだった製品バリエーションは、13.3インチと11.6インチに増え、ストレージをSSD専用のゼロスピンドル設計とすることで筐体をより薄型化、CPUにCore2Duo(1.4GHz~2.13GHz)を採用しながら、

・13.3インチ機 325mm×227mm×3mm~17mm 質量1.32Kg
・11.6インチ機 299.5mm×192mm×3mm~17mm 質量1.06Kg

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という小型サイズになっています。

これを各モバイルVAIOと比較してみると、

・VAIO Z(13.1インチ) 314mm×210mm×23.8mm~32.7mm 質量1.36Kg~

・VAIO Y(13.3インチ) 326mm×226.5mm×23.7mm~32mm 質量1.78Kg~

・VAIO X(11.1インチ) 278mm×185mm×13.9mm 質量0.655Kg~

・VAIO TT(11.1インチ) 279mm×199.8mm×23.5~30.7mm 質量1.14Kg~

・VAIO 505EXTREME(10.4インチ) 259mm×208mm×9.7mm~21mm 質量0.785g~

となり、0スピンドルであることを活かして、薄く広く延ばした形状をしているのがよく分かります。

またAppleにしては珍しく公式サイトに中身の写真を載せており、

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ユーザーから見て手前側にバッテリとタッチパッド、奥側に基板とキーボードを重ねて並べるという、VAIO Xと同じ考え方のパーツ配置になっています。

プレゼンの上手いジョブズらしく、発表会ではケースに収めない剥き出しのSSDを、さも最新技術か何かのようにプッシュしていましたが、

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そんなのは以前から当たり前に存在するモノで(VAIO Zは基板両面にメモリチップとコントローラを配置し、さらにそれを二枚重ねすることでクワッド化するという専用設計)、技術的には特段新しい部分は見あたらず、惜しみなく技術をつぎ込んで作るVAIO ZやVAIO Xとは対極の位置にある、ごくごく常識的な「0スピンドルのCULVノート」PCとして設計されているというのが偽らざるところです。

しかしこの「コストのかかる専用設計された最新技術を使わない」のが、Appleのもの作りの妙。そのおかげで価格は、最安構成の“11.6インチ 1.4GHz-Core2Duo/64GBストレージ/2GBメモリ”で88,800円、最高構成の“13.3インチ 2.13GHz-Core2Duo/256GBストレージ/4GBメモリ”でも168,330円という、非常に安価な設定となっています。

実際に今日から発売されて、日本で世界でどれほど売れるのか予想はつきませんが、もしこれが一般層にも売れるようなヒット商品になったら、今までさんざ10~13インチサイズで1Kg強のサブノートPCを作っては、一部のギークにしか売れずにいた日本メーカーのモバイルPCは一体何だったのか、という口惜しさを初代505以来のサブノートPCオタクである僕は感じてしまいそうです(笑)

ただ冷静に考えてみると、この新MacBookAirが一般層にも売れるとすれば、やはりその要因は「価格」ということであり、今まで「小さく・軽くするためにはコストがかかります。小さく・軽いことに対してプラスのお金を払って下さい」という日本メーカーの考え方は、ギークには受け入れられても、一般層には受け入れられなかったということでしょう。

特にネットブック・CULVノートPCが登場してから、

「持ち歩くPCは15インチオーバーのノートPCがほとんど、それより小さい情報端末はBlackBerry」

という感じで、日本的なサブノートPCの需要が少なかったあの北米において、小型のPCを持ち歩く人が増加しているそうで、てっきり体格や腕っ節やライフスタイルの違いで、彼らは大型ノートを持ち歩くのだと思っていたら、実は「安ければ俺たちだって小さいPCがいいんだよ」と考えていたことが分かってきています。

そこら辺の消費者の考えと、メーカーが提供する製品の微妙な“ズレ”が、今の日本メーカーが世界的ヒット製品を出せないでいる原因と言えるかもしれません。

そして同じCULVノートでも、さすがApple。

思い切って0スピンドル&SSD専用設計にして薄さと軽さを強調することで、安い部品を使い(パーツ単体で見るとほとんどWindows搭載CULVノートPCそのもの)、台湾EMSによる大量生産で安く生産して、販売価格も安く抑えておきながら、決して「安さ」を感じさせないデザイン性と質感を保つ、その『商品演出力』には脱帽せざるをえません。

またバッテリがいわゆる“ハメ殺し”で交換できない、という日本人的視点で行くと「欠点」となる部分も、取り外し構造がいらない分バッテリ容量を大きくすることができ、構造が簡素化されることで作りやすくなる、というプラスの側面もあるわけで、「Walkman対iPod」「和式ケータイ対iPhone」で見られた日本メーカーとAppleの哲学の違いが、ここでも再現されています。

そういった話をもっと掘り下げて知りたい方は、僕も最近読んだ西田宗千佳氏の著書

メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電 (朝日新書)

メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電 (朝日新書)

  • 作者: 西田宗千佳
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2010/10/13
  • メディア: 新書

 

を読んでみることをオススメします。面白いですよ。

 

以上、新MacBookAirをお伝えしてきましたが、今回のAirはVAIOファンの僕でも買ってしまいそうなぐらい魅力的、この価格でこの質量(1Kgジャスト)のMacが使えるのなら、勉強がてらポチっちゃおうかと悩んでしまいました(WiMAX内蔵でないので思いとどまった(笑))。

逆に言うと、何年にも渡って継続していくうちに、ワンセグ・Felicaポート・BDドライブ・フルセグと、価格も装備も肥大化の一方だったVAIO Tの進化の方向は、一般ユーザーにもモバイルPCギークである僕にも届かなかったということ。

これはPCに限った話ではなく、日本の電機メーカーの「差別化・高品質という名の肥大化癖」を考え直す、いいきっかけになるかもしれないと思った新MacBookAirの発表でした。

というわけで、安くて・格好良くて・シンプルで・Atomじゃない11インチクラスの軽量VAIO、期待してますよ(笑)>Sony


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ショウヘイ

おはようございます。
最近はTwitterの方で見させていただいております。
僕もすっかりakoustamさんのおかげでiPhoneに始まりMac2台、最近はドコモのガラケーの代わりにBB9700にしました(笑)
言われているとおりで、簡単で使いやすい。さらにデザインが良い。
余計な機能を入れて高くするのではなく、何を犠牲にして、何を重視するか。
ここら辺り車も同じですよね。
僕はairの13インチの方がいいかな。

これからもわかりやすい解説期待しております。
Twitterでも十分ですが、たまにはブログにまとめていただくと参考書みたいになりますので(大変だとは思いますが)

あ、それと余計なお世話ですが早くMacの世界にお越し下さい(ソニー好きな人のブログ見ていると、そのまんまMacの世界じゃないですか、笑)
by ショウヘイ (2010-10-21 09:03) 

Riever

バラしてもそれなりに綺麗に見えるデザイン(設計も見た目も含めて)、今回も上手いですね。

ノートは小型に越したことはないですし、「お金を払ってでも小さいのが欲しい」というような我々がいるわけですから、「お金が掛からないのなら小さい方がいい」のもニーズとしては至極当然でしょうね。
そう言うところに気付く、というのがまた視点の鋭さではありますが。

type T・・・じゃなかった、VAIO Tはそのうち出るんじゃないんですかねぇ。そろそろ低電圧版CPUでも多くの人には十分でしょうし、小型化してもSSDがあるのでストレージでボトルネックになるわけでもないですし。
「安くて」はどうなるか分かりませんが(^^;;;
by Riever (2010-10-21 11:21) 

たか

引き算の美学ですな。
ファッションと同じです。
by たか (2010-10-23 00:17) 

as

一気にモデルチェンジをしたMacBook Air、登場しましたね。しかも性能バッチリ、しかも軽い(当然薄い)!!今使っているPC(VAIO T)の調子が悪いので買い替えを検討中なのですが、この辺でMacに切り替えもありか~なんて気分になっています。薄くて軽い、しかもリーズナブル!!消費者の心にズドーンとくるマシンですね!
by as (2010-10-23 20:26) 

かつぽん

もうね、仰る通りでm(__)m

Tは惜しい事したよなぁ・・・ホントに。
もしくはVAIO Yをもうちょっと・・・
by かつぽん (2010-10-26 16:19) 

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