海道をゆく [日記]
サンライズに乗った僕が目指す目的地。実家が鳥取なのですから、乗ったのは当然「サンライズ出雲」で、目的地は米子だと皆さん思われたことでしょう。
(VAIO PでBlog編集中)
(自転車を入れても十分寝るスペースが確保できているサンライズシングル(2F部屋))
しかし岡山についてサンライズ瀬戸とサンライズ出雲の切り離し作業見物後、戻ったのは前方の編成。それは「サンライズ瀬戸」のほうです。
そう、今回の旅行はただ単純に実家に帰省するのではなく、まずは四国愛媛県の今治市に行って、そこから自転車で300Km二泊三日の旅をして、鳥取の実家を目指すという計画だったというわけです。
ですので、サンライズ瀬戸で到着した先は香川県の坂出駅。
9月1日ということもあってか、朝7時の坂出駅は意外に混雑しています。
完全な人力改札見るのも久しぶりだなぁ…
そしてスタート地点である今治に行くために、特急いしづち5号に乗り換え、
とうとう愛媛県は今治市にやってきました。
なんで今治か。それは自転車好きなら一度はあこがれる「唯一自転車で渡れる本四連絡橋」、しまなみ海道があるからです。
1999年に橋が全通してから11年、僕自身も「いつかは走るぞ」と思っていたのですが、最近仕事が忙しくて長い休みが取れない状況を考えると、この遅い夏休みが最適だろうと考えたわけです。
この今治から尾道まで、自転車だと最短ルートで約70Km。一日で走るのにはちょうどよい距離なので、まずは尾道目指して走り出します。
コンビニで朝食とボトルに入れるための飲料を調達(この暑さの中で走るのには常に水分をとっていないと確実に熱中症になる)します。
そして今治駅を出て約5Km、最初の目的地今治側の自転車基地となるサンライズ糸山に着きます。
ここで世界唯一の三連吊り橋・来島海峡大橋を眺めてもいいですが、
本当の目的はそれではなく、ここで「しまなみサイクリングクーポン」を購入しなければならないからです。
自転車も歩行者も原付も渡れるしまなみ海道の各橋梁ですが、さすがに自転車と原付は無料というわけにはいかず、通行料金がかかります。ところがその料金の支払い方法が係員のいない賽銭箱方式なおかげで釣り銭が出ないうえ、自転車だと「50円」という橋が大半をしめるので、50円玉を大量に用意しないと大変なことになります。
しかしこのサイクリングクーポンなら、50円のクーポンが10枚綴りになって500円。通行料金200円の来島海峡大橋ではクーポン4枚、100円の多々羅大橋では2枚というように払うことが出来るので小銭の調達に困ることもなく、しまなみ海道を全線自転車で走ったときの通行料金の合計が500円なので、無駄になることもありません。全線を通してサイクリングする方は必ず購入してから旅を始めましょう(尾道側でも売ってます)。
で、このクーポンを買うときに係のおじさんがひとこと「250円でいいよ」と言い出します。
「え?」
「今半額キャンペーン中なんだ。250円で500円分のクーポンが買える」
「マジすか?それはラッキー。ありがとうございます」
というわけで今回は250円で全線走れることとなりました。クーポンを手に入れたので早速しまなみ海道サイクリングスタートです。
橋が通れると言っても、元々この各橋梁は「西瀬戸自動車道」という高速道路のために作られた橋。このルートでの橋以外の箇所では一般車両と同じく下道を走らなくてはいけません。
ところが下道は海岸線沿いに海抜0mとかで走っているのに対し、橋は船の邪魔にならないよう海抜50mぐらいのところに道を走らせているのですから、自転車は海抜0mの下道から高速道路の高さまで自力で上がらないといけません。
そのためにしまなみ海道の各橋梁は前後に自転車・原付・歩行者用のアプローチ道路がもうけられています。
で、原付はパワーがあるので、原付用アプローチ道路が短い距離を急傾斜で駆け上がるように出来ているのに対し、自転車用アプローチ道路は地元のママチャリおばちゃんでも登れるよう、緩い斜面でぐるぐると長い道で出来ています。
その結果来島海峡大橋今治側のアプローチ道路はループ上のこんなぐちゃぐちゃ状態に(笑)
僕のようなロードレーサーには楽々なこの緩斜面アプローチ道路を登っていって、ようやく高速道路と同じ高さに合流です。
しかしさすが世界でもここしかない三連吊り橋である来島海峡大橋だけあって、主塔も大きいこと大きいこと(最も今治側の第三来島海峡大橋は中央支間長(二つの主塔の間の長さ)日本3位の吊り橋)、
ここから第三・第二・第一と三つの吊り橋で合計4Kmの直線が続きます。
しばらく進むと問題の賽銭箱形式の料金所が出現。
来島海峡大橋は三つ合わせて通行料金が200円なので、クーポン4枚を箱に投入します。
今日は風もなくのんびりと三本の橋を渡ったら、最初の島「大島」に到着です。大島側の自転車アプローチ道路はループ式。
ぐるぐると回って海面の高さに降りたら、島内の一般道を走り出します。海面レベルから来島海峡大橋を見るとこの高さの違い。
しかしどうせなら、この来島海峡大橋を下からではなく上から眺めてやろうということで、今度はこの大島にある「亀老山展望台」目指します。
しばらく走ると亀老山は右に行けという案内が出現、
ここから平均勾配7%の急坂を登って、標高307.8mの展望台に到着です(一言で書いてますけど登るの無茶苦茶苦労しました(笑))。
そこにはお土産屋さんがあって、ご当地名物アイスクリーム「玉藻塩アイス」「伯方の塩アイス」なんかも売っているのですが、最大のハイライトは隈研吾デザインの展望台。
このように景観を壊さないよう、展望台が半地下状態で出来ているのです。これで山の麓側からは山頂に何も無いように見えるというわけです。
そして苦労した甲斐あって、展望台からは絶景が望めました。
眼下に見える来島海峡大橋が見事です。
一通り見物が終わったら、問題の?「玉藻塩アイス」を食べて、30分かけて上ってきた道を8分で駆け下ります。
そのまま大島の道を北上していくと、次の伯方島と結ぶ「伯方・大島大橋(通行料金50円)」が見えてきました。
ここには山の地形を利用した長いアプローチ道路が造られています。
そのまま伯方・大島大橋を渡り終えると、二つ目の島伯方島。伯方の塩と造船業で栄えている島です。
その次の大三島につながる大三島橋のアプローチ道路は、なんだかうっそうとした林の中を走らされたり(このほうが日陰を走れて助かるんですけど(笑))、
「大三島橋(通行料金50円)」はしまなみ海道中唯一のアーチ橋。
そういえば、もう9月だというのに僕と同じような考えの人が多いのか、自転車旅行中の人たちとたくさんすれ違いました。
それも夏の北海道と同じで、すれ違うたびに「こんにちは」と挨拶する習慣もあって、しかも地元の自転車利用中の人や、見回り中の本四高速株式会社の作業員の方とも挨拶しあうなど、このしまなみ海道沿いは、この自転車道の存在のおかげで自転車に対する理解が高いところになったのでしょうか。大三島橋であったあの青年は今日事故なく走り終えたかな?
大三島橋を渡り終えればそこは大三島、橋もこの角度から見ると美しいアーチ橋なのがよくわかります。
続いて見えてくるは愛媛県と広島県の県境でもある多々羅大橋。
しかし、いったんこの多々羅大橋をパスして目指すところがありました。
しまなみ海道沿いにある唯一の天然温泉。多々羅温泉です。
建物は結構立派。
こうして自転車旅の真っ最中に一時的にせよ温泉で筋肉を緩めることが出来るのは最高の贅沢です。
一通り温泉につかり(ジャグジー風呂だった!)、一度気分をリセットしたら、多々羅大橋に向かいます。
この「多々羅大橋(通行料金100円)」、ほんの数年前まで斜張橋では世界最長の中央径間長を持つ巨大橋梁で、その美しい主塔デザインは見るものを引きつけます。
が、このデザインが思わぬ効果を生み出し、主塔の真下で音を立てるとこだまのように音が何度も反響してくる「鳴き龍」の現象が発生するようになっているのです(設計時にそうなることは予想されてなかった)。
実際に歩行者・自転車道路の主塔真下にはわざわざ拍子木が置かれ、通行人がその現象を確かめることが出来るようにはからいがされています。
これがまぁ面白いこと(笑)。本当に見事なまでの反響で、これが偶然生み出されたものとはとても思えないほどでした。
そんな多々羅大橋を渡ると次は生口島。
愛媛側からも広島側からもちょっと遠くなるルート中央の島だからでしょうか、街もちょっと寂れ気味。
なんか過疎化が急速に進む僕の生まれ故郷に帰ってきたみたい。この生口島の北側を走ったら、次は囲碁やタレントの出身地で有名な因島へ。つなぐのはこれまた斜張橋の「生口橋(通行料金50円)」です。
(地元の若い人々もママチャリでアプローチ道路を登る。)
主塔デザインは多々羅大橋とはまた違った感じです(当然「鳴き龍」現象は起きない)。
渡り終えたらそこは因島。酒とたばこと斜張橋の図です。しかし地元の子供たちも小さな頃からこんな土木芸術が身近にあったら、将来土木技師とか目指す子が出てきそうな気がします。それぐらいインパクトある存在感ですから。
因島あたりまでくると、なんだか自分が島を走っているという感覚が薄れていきます。
因島を走り終えたら、最後の島向島に渡るための「因島大橋(通行料金50円)」に到達します。
この因島大橋だけは、上が自動車・下が歩行者+自転車と原付という二階建て構造。そのため走っているときに海の風景が見づらくなってしまっています。
これで自転車で走れるしまなみ海道の橋はすべて走破。あとは今日のゴール地点尾道まで向島の道を走っていきます。
この赤い橋は向島と隣の岩子島をつなぐ赤いアーチ橋。
向島北部まで来ると、もはや尾道市街の一部といった風情です。
最後はアニメ「かみちゅ!」や大林監督の尾道三部作でも出てきた、向島と尾道中心部とをつなぐ風物詩、渡し船に乗って尾道にゴールです(最後の尾道大橋は法的には自転車も渡れるはずだが、路肩スペースが無くとても危険で事実上渡れない)。
しばらく待ってるとのんびりと小型フェリーがやってきて、乗客は自転車ごと乗船します。
料金はこんな感じ。
わずか5分ほどの短い船旅ですが、これはこれで味があるので無くして欲しくないなと思ったのはベトナムの時と同じです(笑)。
さて尾道市街に入ったので、まずは夕食。なにせ走るのに夢中で昼食がおざなりになっていたので、腹が減って仕方なかったのです。
いってみたのは尾道ラーメン壱番館。そこには尾道ラーメンの由来もありました。
なるほど「平打ち麺」「小魚をベースに入れたスープ」「豚の背脂」が尾道ラーメンの極意と言うことね。
で、注文したのはチャーシューラーメン。これがまぁ分厚いこと。
たっぷり尾道ラーメンを堪能したら、予約してあるホテルを目指します。と言っても何をトチ狂ったのか、坂で有名な尾道旧市街のその山の上にある宿を予約してしまい、
宿にたどり着くまでが一苦労。着く頃にはすっかり日も暮れてしまいました。
この尾道ビュウホテルセイザン。苦労して登らされるだけあって、部屋からの尾道市街の夜景は格別。
こうして夜の海峡を、さっきの小さな渡しフェリーが行き来している様子を見下ろしているだけでも、宿代の元はとったなという感じです。オーナーがムエタイ修行でタイに行ったことがあり、奥様がタイ人と言うことで、全体にタイのノリが強いですが、東南アジア好きの僕にはそれもプラス項目。
というわけで一日ゆっくり堪能した「しまなみ海道」道もいいし、海の上を走るのは爽快だし、サイクリング好きならこれは一度は挑戦してみるべき道ですよ。僕も今度は別ルートで寄り道しながら二日三日かけて走りたいなぁ。
ちなみに今日の走行距離は80.72Kmルートはこんな感じで。
明日はさらに北、中国山地を目指します。
自然が美しいですね。
それと、天気にも恵まれたようでなによりです。
by Riever (2010-09-02 03:19)
旅の行程も大変ですが、これだけの写真を使って
これだけの長文エントリーを旅先でVAIO Pで
書いているところがさすがです。
by 店員佐藤 (2010-09-02 08:20)
タダの帰省じゃないところがさすがですね!!
by かつぽん (2010-09-02 17:26)
うん、ホントスゴイですね(汗)
ボクも旅行中のリアルタイム更新は無理ですね。
書いてる内に疲れて眠くなっちゃって(汗)
しかも、自転車だったらなおさら疲れてません?(汗)
無理しないでくださいね・・・と言いつつ、NEX-5画像に期待してます(笑)
by kozy (2010-09-03 02:24)
おじゃまします
ここなら飛行機に乗らずにいけますね^^。
何気に大変そうなところもあるようですが^^;、楽しそうなコースですね。
by K (2010-09-03 22:21)
まさか、私の帰省ルートをトレースされるとは見覚えのある坂出が出てくるまでまんまと罠に落ちてました(笑)
なかなか尾道の夜景なんて拝めないから、是非戻って来られたらその辺りを掘り下げて下さいませ。
by Virgo (2010-09-05 00:31)