SSブログ

iPhone狂騒曲 [携帯電話・iPhone]

昨日は15時半過ぎからこいつの話題で持ちきりでしたね。

iphone.jpg

「iPhone」について (SoftBank Mobile)

iPhone(Apple)

僕としてはSoftBank回線での提供というのは完全に予想通りでしたが、どうもケータイ評論家さんたちはなまじ業界と係わりすぎてしまったことから、予想と言いながら自分の願望を投影してしまったようで、かえって携帯電話分野とはあまり係わり合いが無い本田雅一氏のほうが、冷静な分析でSoftBankでの提供を当ててしまったことに、ライター・ジャーナリスト・評論家と言う職業の難しさを感じてしまいます。

何はともあれ、これで6月9日から始まるWWDCでAppleからHSDPA版iPhone「iPhone 3G」が発表され、無事日本でもiPhoneが使える日が来ることがほぼ間違いない状況となったわけで、スマートフォン好きとしては面白そうな機種の選択肢が増えることは素直に喜ばしいです(たとえiPod嫌いなSonyファンの僕でも)。

それにしても、

>この度、ソフトバンクモバイル株式会社は、今年中に日本国内において「iPhone」を発売することにつきまして、アップル社と契約を締結したことを発表いたします。
>SOFTBANK MOBILE Corp. today announced it has signed an agreement with Apple® to bring the iPhone™ to Japan later this year.

たったこれだけの文章なのに、iPhone日本版がSoftBank回線での提供になるという発表は相当なインパクトがあったようで、普段はあまりモバイル・スマートフォン・IT系の話題を扱わないBloggerさんまで記事に取り上げていたのには驚いてしまいました。

特に「なんでdocomo(au)じゃないんだ~」という声があふれていて、どうしてもキャリアの影響力が強い日本では、“キャリアの好き嫌い”というのが携帯電話選びの重要なファクターになっているんだなぁと感じました(海外ではどのメーカーの端末を使うかこそが重要で、土管屋に過ぎないキャリアは、エリアが広くて価格が安く品質の高い回線さえ提供してくれれば、それほどこだわらないというのが一般的。)。

というわけで、今回AppleがSoftBankをパートナーに選択した理由を僕なりに分析していきますと。

1.auは論外

これはauの規格がCDMA2000 1Xという段階でどうしようもなかったですね。世界的に見ればCDMA2000は一部の地域でしか展開していないマイナー規格に過ぎず、(日本・韓国以外の)200ヶ国以上で採用されているGSMと、そのGSMとの親和性が高くシームレスなサービスが提供できるW-CDMA/HSDPAが第3世代携帯電話の主流になっています。

Appleと言う会社は言語セット以外のローカライズは基本的に行わず、世界中に同じ製品・サービスを提供することで価格競争力と高いブランドイメージを得ているのですから、巨大市場のヨーロッパで採用キャリアがひとつも無く、将来性も低いCDMA2000版iPhoneをW-CDMA版と別に開発することはほぼ無いと言っていいでしょう。

しかもauのCDMA2000は、同じCDMA2000でも周波数割り当てが日本独自のものになっており、もしau版iPhoneを出すとなると日本専用設計に等しいものになってしまうので、仮にCDMA2000版iPhoneが出ても「ただし日本のauは除く」となる可能性が高いです。au持ちでiPhoneが欲しい方は素直にMNPしましょう。

2.今のdocomoは動きが遅い

これは本田氏も指摘していますが、その昔NTT本体から傍流部門扱いされ、ベンチャー的な小さな組織がスピンアウトして出来たNTT移動通信網のころに比べ、今のNTT docomoは組織があまりにでかくなりすぎました。

僕が長年仕事で係わってきて感じているのは、現場が肌で感じた情報も下から上へとゆっくり流れ、それに対する判断や対策も上から下へとゆっくりと寄り道しながら降りてくる、いかにも硬直した組織になってしまったということです(現場があげた報告書を「社長が読むこともある」と言われてましたが、毎週何百・何千枚もあがる報告書の中の一言など重要視されなくて当たり前)。

それでも大星さんや夏野さんのような強烈なリーダーがいたころは、「こっちに行こう」というリーダーシップの元にそれなりにすばやい判断が下ったものですが、今はどちらかというと官僚的で集団指導体制的な経営が行われています。Appleが「iPhoneを売るためにはこういうことをしてくれないと」という要求を突きつけても、それを呑むのかどうかという判断が下るのに何日も待たされたんでは、良くも悪くも孫正義社長というカリスマに権力が集中することで、素早い決断が下されるSoftBankにAppleがなびいてしまうのも無理からぬことです。

ではAppleは「iPhoneをやらせてくれ」と言ってくる日本の二キャリアにどんな条件を出したのか、これも僕なりに予想してみますと、

 ・iPhoneの契約台数と毎月のiPhoneユーザーの使用料金に応じて一部をAppleにキックバックする。
 ・90Xi/9XXSHというような日本のキャリア独自の型番をつけない。
 ・本体にキャリアのロゴは入れない。
 ・販売は携帯電話販売店などでは行わず、オンラインストアを含むアップルストアと量販店のiPodコーナーなど他のApple製品と並べて行う。
 ・2G版iPhoneと同じく、契約は店頭では行わず購入したユーザーがPC+iTunesでアクティベーションを行う方式とする。
 ・iPhone専用のパケット料金プランを用意する(当然定額制)。

おそらくこんなあたりではないでしょうか。要するに「今までの日本の携帯電話キャリアのビジネスモデルには乗らないよ」ということです。

これじゃあdocomoがそう簡単に呑めるわけがありません。長い年月をかけて築き上げてきた「キャリアが全ての面倒を見ることで、固定通信事業者のように土管屋に成り下がることなく、利益を最大限かき集める」というdocomoのビジネスモデルを捨てろ言うのに等しいのですし、iPhone専用の料金プランなんて用意したら、今までさんざdocomoの無理な要求に従ってきた国内メーカーから反発がでることも予想されます。

この状況でいくらdocomoの若手や現場が「ユーザーはiPhoneを求めている」と訴えたところで、体質の古い経営陣が喧々諤々の議論を繰り返すことになるであろうことは容易に想像がつきます。ただdocomoもiPhoneを導入したくないわけではなさそうですから、経営陣の決断が下ってAppleの要求を受け入れられればdocomo版iPhoneの可能性は十分あると思われます。

しかしいくら決断の速い孫社長と言えども、SoftBankにとっても厳しい要求であることにかわりはありません。よくAppleの要求を受け入れたなぁと感心してしまいますが、果たしてこんな特殊な売り方をSoftBankが出来るのか?そこで僕が思い出したのがこれです。

Disney Mobile

SoftBankの設備や端末供給を受けながらも、DisneyがDisneyの世界観を維持したまま、Disneyの名前で販売することが出来るこの擬似MVNO方式。このやり方ならAppleの持つブランド力・販売網を残したまま、SoftBank回線でiPhoneを提供することが楽に行えるはずです。

もう一度今日のプレスリリースを読み返してみましょう。

>ソフトバンクモバイル株式会社は、今年中に日本国内において「iPhone」を発売することにつきまして、アップル社と契約を締結した

微妙な日本語ですが、「ソフトバンクモバイルが販売主体となってiPhoneを販売することになった」と書いているわけではありません。無茶な深読みをすると「Appleが日本国内でiPhoneを発売することについて(ソフトバンクモバイルが協力するという)契約を締結した」と読めなくも無い。

僕はSoftBankが今年Disney Mobileを始めたのは、「うちならiPhoneをこういうふうにApple主体で売ることができるビジネスモデルを用意してますよ」というメッセージだったのではないかと思っていますが、さて真相はいかに。

なおiPhoneの発売時期ですが、初代iPhoneが2007年1月発表→6月発売だったことから、来週のWWDCで発表→秋から冬ごろボーナスシーズンに向けて発売となるのでなはいでしょうか。それまでのんびり待つとしましょうかね。


nice!(16)  コメント(3)  トラックバック(1) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

nice! 16

コメント 3

Riever

iPhone、Softbankだったのは消去法的に十分予想できましたね。先生の(予想)条件ですが、以下の3つはAppleのブランドイメージとして当然出しそうですし、何よりその方がキャリアにプレッシャーを与えられて個人的には大賛成です。
>・90Xi/9XXSHというような日本のキャリア独自の型番をつけない。
>・本体にキャリアのロゴは入れない。
>・販売は携帯電話販売店などでは行わず、オンラインストアを含むアップルストアと量販店のiPodコーナーなど他のApple製品と並べて行う。

これで少しでも今のキャリア主導が変わってくれればと思うのですが・・・
by Riever (2008-06-05 00:42) 

S300

Softbankが好きそうな 「独占契約」 という文字が無いのが
気なるのですが・・・

今回は、i-modeのようないわゆる”ケータイメール”といヤツは無理なんでしょうかね?
私のような一般ユーザーからすればかなりのマイナス要因になると思うのですが・・・
by S300 (2008-06-05 08:47) 

かつぽん

僕もDisneyMobileの例からひょっとしたら
MVNOでAppleがやるのかと思っていました!!
当たりですね〜(^o^)
これで初めてSBMの回線”も”持つことになりそうです♪

SMSは機能として載っていますから、少なくとも
SBMユーザーには問題ないはずかと>S300さん

by かつぽん (2008-06-05 08:56) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。