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“秒240コマ”究極の動画がやってくる　[Sony・TV] [編集]

昨年12月、「液晶と有機ELに経営資源を集中させる」という経営判断によって、Sony社外へカーブアウトすることになった次世代ディスプレイ技術“FED（電界放出ディスプレイ）”ですが、そのカーブアウトした会社エフ・イー・テクノロジーズが、240Hz駆動（秒間240コマという超高速表示）のnano-Spindt FEDを、今月アメリカで開催されるSIGGRAPH2007に出品すると発表しました。

究極の動画映像表現を可能にする世界初の240Hz駆動nano-Spindt FED 開発（エフ・イー・テクノロジーズ PDF）

FEDとは何ぞやということをおさらいしておくと、似たディスプレイ技術であるあのCanonのSEDを取り上げた時にも書きましたが、電子を飛ばして蛍光体にぶつけて発光させるという基礎原理が、ブラウン管と同じなことから、「ちょ～ちっこくしたブラウン管を、たくさん(たとえばフルHDなら1920×1080ドット×3原色分=622万個)並べたディスプレイ」という表現が一番わかりやすいでしょう。

FEDとSEDの違いは電子を取り出す仕組み。SEDはnano slitと呼ばれるスリットから電子を取り出して飛ばすのに対し、エフ・イーのnano-Spindt FEDは、円錐形をした「ナノスピント・エミッター」と呼ばれるものから電子を取り出して飛ばすようになっています。

（エフ・イーのサイトが笑っちゃうぐらい何もないところので、impress AV watchの記事から構造図をもらってきました。）

とにかく発光の基本原理がブラウン管と同じなので、液晶のような動画ボケが出にくいというのはFEDの元々の強みなのですが、まさかいきなり4倍のコマ数に耐えられるような高速応答を実現できるとは思いもしませんでした。

しかもただ単にパネルが240Hz駆動に耐えられるだけでなく、その4倍のデータを処理するための駆動回路も同時開発。さすがに計算速度がまだ追いつかないのか、フルHD（＝約200万画素）ではなくWXGAレベル（＝約90万画素）の解像度が精一杯のようですが、今後プロセッサの処理速度をあげていくことで、フルHDでの240Hz駆動も早晩実現すると思われます。

エフ・イーのプレスリリースにありますが、人間の目が知覚できる限界は240コマ/秒前後らしく（それ以上は残像で判別できなくなる）、このディスプレイはまさに動画表現として究極の域に到達したと言っていいでしょう。

そんなFEDに240Hz映像を提供したのは、PS/PS2/PS3の“グランツーリスモ”シリーズで有名なポリフォニー・デジタル。SIGGRAPHでは秒240コマで出来た、グランツーリスモ5プロローグのデモ映像が流されるんだそうです。駆動回路の開発にもSonyが深く関わっているようですし、Sonyから単にスピンアウトするのではなく、協力関係・資本関係を保ったまま別会社になるカーブアウトという方式をとったのが、見事に活かされていますね。

エフ・イーのFEDは、当面は業務用・プロ用モニターの置き換え市場を狙って、最短で2009年発売を目標に商品開発をしていくようですが、成功すれば民生用の展開も考えているみたいなので、転びようによっては本家の有機ELの好敵手となってしまうかもしれません。Sonyファンとしては嬉しい悩みですけど。

さてその本家はというと、SIGGRAPH2007に「CELL B.E+RSX」というPS3と同じプロセッサ構成で、4K(4096×2160)映像をリアルタイム処理したり、高速な科学技術計算をできる“Cell Computing Board”を出品するそうです。

【米国・SIGGRAPH 2007】高速演算性能 “Cell Computing Board”を技術出展
- 高速処理化・小型化・低消費電力化を実現 -

いやはやSonyという会社、改めて凄い会社だなと思った今日の日でした。

2007-08-01 23:59 nice!(8) コメント(3) トラックバック(0)