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Motionflow [Sony・TV]

既報の通り、BRAVIAのエントリーモデルがフルモデルチェンジし、BRAVIA J3000/J5000シリーズとなりました。

BRAVIA<ブラビア>

昨年秋に出た2500シリーズでは、コスト削減のために消えてしまった、XMBインターフェースやDLNA対応が復活し、逆に「アプリキャスト」など新しい機能がついた今回のJ3000/J5000シリーズですが、今日はそれら新機能の中でも、J5000シリーズに搭載された動画画質向上のための新機能「Motionflow」に絞ってレビューしていきます。

まずはSonyのプレスリリースにある説明文から。

>従来の2倍のスピード120Hzで映像を映し出すとともに、独自のアルゴリズムにより動きの速い映像を残像感少なく、映画特有の輪郭のゆれをなめらかな動画で再現する “モーションフロー”(J5000シリーズ)

というようにこのMotionflow、今までのテレビの二倍の速度である、120コマ/秒で映像を映し出して、残像を低減させるという技術なわけですが、

なぜコマ数を倍に増やすと、液晶テレビの残像感が少なくなるのか、それを知るためには、従来のブラウン管と液晶ディスプレイの、発光の仕組みの違いを理解しなくてはいけません。

皆さんが目にしているブラウン管やプラズマディスプレイというのは、人間の視覚の残像効果から、常に光っているように見えますが、実は立ち上がりの一瞬だけ発光し、あとはまたすぐに黒の状態に戻るという光り方をしています。こういうのを「インパルス型」といいます。

一方液晶ディスプレイというのは、60コマ/秒なら1/60秒間常に光り続ける「ホールド型」という光り方をしています。

本来ちかちか点滅しているインパルス型よりも、ずっと光り続けているホールド型の方が自然な光り方のはずですが、皆さんご存知の通り、液晶という物質は、電圧をかけてから状態が変化するまでにある程度の時間がかかり、一瞬で目的の明るさに到達するわけではありません。

このタイムラグこそいわゆる「応答速度」というもので、これが遅いとコマとコマの間の変化中の色が人間に知覚されて、「動画ボケ」や「残像感」をもたらすのです。

そこでまず考えたのが応答速度を速めること。その昔液晶WEGAも「オーバーシュート」という手法で、応答速度を速めたことが宣伝文句に謳われていました。

次に考え出されたのが疑似インパルス駆動。液晶が目的の明るさに到達したら、黒に戻してしまい、ブラウン管のような光り方の真似をさせることで残像感を低減させるというものです。これは「黒挿入」という名前で採用しているメーカーが今でもあります。

黒挿入の弱点は、光を落として黒に戻してしまうため、明るさが自慢の液晶テレビなのに、映像が暗くなってしまうこと。これも各社いかに暗くしないで黒挿入するか様々なアイデアを凝らしています。

ここらへんの進化は、日経エレクトロニクスに詳しい図が載っていたので、それをご覧ください。

このように進歩してきた残像感低減の技術の最新形態が、「フレーム補間」と呼ばれる方式です。

先ほど申し上げたとおり、残像の原因はコマとコマの間の変化途中の色が人間に知覚されてしまうこと。

ならば画像処理エンジンが前後のコマの画像を計算・解析して、コマとコマの間に新しいコマの画像を作り出して挿入してしまえば、ある程度正確な色が再現されて、変化途中の変な色を知覚されるよりも残像感が減るだろう、というやりかたです。

これが今回のMotionflowの正体です。

BRAVIAのサイトに説明画像がありますが、

Motionflowは本来は1秒につき60コマだった動画を、計算で倍のコマ数に増やし、1秒120コマとすることで、残像感の低減と動きの滑らかさを実現したというわけです。

このフレーム補間方式の弱点は、計算が甘いと不自然な動画になったり、場合によっては単なる映像ノイズになってしまうところにあります。ここらへんが各メーカーの腕の見せ所。Sonyは縦・横方向だけでなく斜め方向の画像解析も行うことで、より完全に近い中間フレームの生成を実現しており、効果の強弱を三種類用意することで、映像の特性の違いやユーザーの好みに合わせ設定できるようになっています。

またあまりに複雑な処理のために、表示に遅延が発生しやすく、PlayStationの格闘ゲームなどシビアな操作が要求されるゲームでは、コントローラの入力に画像表示がついていけなかったりすることがあるので、「ゲームモード」というのを設けて、MotionflowがOFFになるのも自前でゲームをやってるSonyらしいところでしょう。

 

このように最新技術であるMotionflowですが、結局のところその効果は店頭で実際に見るしかないでしょう。僕もCEATECなどでSony以外の会社のフレーム補間方式テレビを見ましたが、なかなか効果が高かったように記憶しています。これは一刻も早くホンモノが見たいところですね。

それにしてもこういう動画画質向上も、まずは解像度をフルHDにしてからだと思うんですけどねぇ。まぁフルHDにするとフレーム生成のための計算量が大幅に増えるので、強力なプロセッサを積む必要があり、現状のJシリーズではWXGA用のMotionflowしか積めないということも考えられます。

でもそれってなんか本末転倒のような気がしないでも…


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コメント 12

floss

いつもながらわかりやすい解説で勉強になります。
なるほど、高度な補完機能なんですね。
実際の絵がどうなっているか、楽しみです。
by floss (2007-03-31 08:17) 

arkstar

WXGA(1,366×768)=1,049,088ドット
フルHD(1,920×1080)=2,073,600ドット
単純計算でも、ほぼ倍のドット数ですよね。
はやり、フルHD分の演算は、今のままなら荷が重いって事なんでしょうね。
by arkstar (2007-03-31 10:14) 

Riever

まずフルHD液晶出してからだと思いますけどね・・・。
評価はしたいところなんですが。
by Riever (2007-03-31 13:57) 

こんばんは。今回32インチもフルHD化されるのものと期待していたのですが、ちょっと肩透かしを喰らってしまった感じです。やはりXのモデルチェンジを待ったほうが懸命でしょうか?
そして今回も詳細なご説明、ご苦労さまでした。
by (2007-03-31 20:43) 

Virgo

倍にしても、目のさとい人間ならすぐ慣れて、次を次をって、ならなければ良いのですが・・・意外と慣れるものですからねぇ〜。
by Virgo (2007-04-02 21:02) 

はまちゃん

モーションフロー、瞬時に絵を生成しなきゃいけないですもんね。
この複雑な処理ですが、やっぱりこういうのにCellを使えば効果って
でますかね~。Cell、何かに載せて生かして欲しいですが・・
by はまちゃん (2007-04-02 21:39) 

akoustam

>ふろすさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

こればっかりは僕がここでごたくを並べても意味無いですから、百聞は一見にしかず、とにかく店頭で見てみるしかないですね。
by akoustam (2007-04-03 02:00) 

akoustam

>arkstarさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

ただ各社とも高性能なプロセッサを投入して、フルHDでも倍速駆動を実現しつつありますから、Sonyも年末商戦向けの製品では、フルHDMotionflowを積んでくるでしょうね。
by akoustam (2007-04-03 02:03) 

akoustam

>Rieverさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

スケーリングすると、ボケが薄くなってシャープ感が増してしまうなど、やはり映像は変わってしまいますからね、動画ボケも気になりますが、まずそっちが問題なんじゃないのか、と言いたくなりますね。
by akoustam (2007-04-03 02:05) 

akoustam

>シマリスさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

Xがモデルチェンジして26/32インチから展開になってくれるのがベストなんですけどね。
by akoustam (2007-04-03 02:08) 

akoustam

>Virgoさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

カラーブレーキングもそうですけど、個人差ってありますからね。人によっては不自然さを感じるかもしれませんね(僕は低価格タイプのDLPでカラーブレーキングを感知してしまうほう)。
by akoustam (2007-04-03 02:10) 

akoustam

>はまちゃん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

こういのって複雑なベクター演算処理の繰り返しになりますからね、Cellの得意分野とは微妙に違うような気がしないでもないですが、それでもあのパワーでなんとかして欲しいところです。

というかCell以上に高速なメモリを大量に積む必要があるかも。
by akoustam (2007-04-03 02:14) 

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