SSブログ

Moto RAZR?いえ、Sony LASERです。 [Sony・TV]

先週閉幕したInternational CES、Sonyの展示は27インチ有機ELディスプレイのインパクトが大きすぎて、他のディスプレイが影に隠れてしまった感がありましたが、実は僕がもっと注目していたのが、「レーザープロジェクションテレビ」。

CESが終わって落ち着いてきたのか、ようやく各メディアでこのテレビがどんなモノだったのか情報が流れ始めました。

2007 International CES特別編 ~レーザー光源SXRDリアプロ登場~ プラズマ対液晶の動画性能戦争(impress AV Watch)

麻倉怜士のCES2007リポート No.5 噂のレーザープロジェクションテレビ、遂に登場(HiVi WEB)

この参考展示されていたリアプロTV。大きさは55インチ、映像表示デバイスはおなじみのSXRD、試作品ながら左右にフローティングデザインを思わせるアルミフレームとアクリル板を配するなど、今すぐ市販されてもおかしくないレベルまで作りこまれています。

そしてこいつの最大のトピックは、スクリーン投射用の光源に、BRAVIA A2500やVPL-VW50で使われている高圧水銀ランプ(UHP)でも、VPL-VW100に使われているキセノンランプでもなく、次世代光源と呼ばれる「半導体レーザー光源」を使っていることです。

この「レーザー光源」が今までのランプと違うところ、上記西川氏の記事も触れていますが、改めて整理しますと、

1. 極めて色純度が高い。

BRAVIA公式サイトの「ライブカラークリエーション」の解説にもあるように、テレビというものは、赤・緑・青、三つの色の合成で画像を作っていきます。しかしその色は決して理想的な赤・緑・青で発光しているわけではなく、色のにごった純度の低い光も混じりこんでしまっています。これをいかに消すかがテレビの色の綺麗さに直結するわけですが、レーザー光というのは位相・振幅がきっちりと揃った“コヒーレント光”なので、赤なら赤、緑なら緑、青なら青の混じりっけのない色の光として発光します。

ですからスペクトラム解析をかけると…

上の図はSonyがCESでレーザーリアプロの技術資料として掲示していた、光源のスペクトル図で、横軸が波長、縦軸が波(光)の強さを示します(日経Tech-on!より)

これを見ると一目瞭然、レーザー光源というのがLED光源やUHP光源と根本的に光り方が違うものだというのがわかります。

図の中では青い線で示されているUHPのスペクトル分布。波長440nm付近の青い光と、波長550nm付近の緑の光は強くなっていますが、本来光ってほしい波長640nm付近の赤い光があまり光っていないのがわかります。なのでUHPを光源に使ったプロジェクタは赤い色が弱く、全体に青白い感じのする映像になってしまうのです。

また波長480nm付近や、波長580nm付近に小さな光のピークが出来ていて、これら純度の低い青や緑が、本来の青や緑の色を悪くしています。

一方図の中では赤い線で示されるLEDのスペクトル分布。青と緑と赤の光が満遍なく強くなっていて、UHPより理想的な光で光っていますが(緑が少し弱い?)、やはり別の波長の光も混ざりこんでいて「ピュアなRGB」は実現できていません。

それがレーザーになると、青は波長457nm、緑は波長532nm、赤は波長642nmというその光らせたい色の光だけが光っていて、あとのいらない光は全く発光していないのです。これが「色純度が高い」の正体です。

そして光の強さも際立っているのでお分かりのとおり、レーザー光はダイナミックレンジが広く取れ、色域も桁違いに広くすることが出来ます。

これもCESで掲示されていたSonyの資料。レーザーTVは色域が圧倒的に広く、光源の開発元であるNovalux社は「NTSC規格比200%の色域も可能」と豪語しています。

2. 高速起動。

リアプロテレビBRAVIA Aシリーズは、リアプロ不毛の地日本でもなかなかの評価を得ましたが、リアプロの弱点の一つとして言われているのが「電源ONしてから画面が出るまでが遅い」ということ。UHPは電源を入れてから安定して発光するようになるまでにかなり待たなくてはいけないのです(皆さんも体育館等の水銀灯が、光り始めてから安定して明るくなるまである程度時間がかかる、というのを学校などで体験していると思います。)

しかしレーザー光源は半導体に電流を流せば、即100%の発光をします。電源ONしたら即座に100%の明るさの画面が出現するテレビなんて素晴らしいじゃないですか。

3. 長寿命。

これもこのレーザー光源の開発元であるNovalux社のサイトにありますが、レーザー光源は2万時間使用しても出力が低下せず100%の状態を保っているんだそうです。こうなると光源が切れるより先に、テレビとしての寿命がきてしまうので、レーザーリアプロは「ランプ交換不要」ということになり、リアプロの弱点がまた一つ消えます。

4. 省電力。

光が強いということは、少ない電力で必要な光が取り出せるということ。Novaluxでは同サイズのプラズマの半分の消費電力のリアプロテレビを作ることも可能としています。

5. コンパクト。

UHPやキセノンランプを光源に用いたSXRDプロジェクタ/SXRDプロジェクションテレビは、まず光源から出てきた白色光を、ダイクロイックミラーと呼ばれるものでRGBの三色に一度分離をし、三つのSXRDに照射して映像を生成した後、再び光を合成してスクリーンに投射することで画面やスクリーンに映像を映し出します。

それに対しレーザー光源は発光段階で三つの色に分かれているので、

SXRDに照射する前段階の光学ブロックが不要になります。西川氏も書いているように、この光学ブロック周りは非公開とされているため詳細はわかりませんが、三菱のDLPレーザーリアプロ試作機と同じく、光ファイバーでレーザー光がSXRDまで導かれ照射されているものと思われます(三菱もNovalux社のレーザー光源を採用している)。

この結果、光学ブロックは大幅に小型化、55インチのリアプロが奥行き27cmという薄さを実現したわけです。

コンパクトで、圧倒的に綺麗で、低消費電力で、出画が速い、ランプ交換不要のメンテフリーと、リアプロの弱点をことごとくつぶすことの出来る(残るは視野角のみか?)レーザー光源ですが、これまた有機ELと同じく実用化にむけて超えなくてはいけない壁があります。

それは何といっても「高い」ということ。

どこまで行ってもリアプロはリアプロなわけですから、今売るとなったら液晶・プラズマテレビと真正面からぶつかることになります。しかしいくら性能がいいと言っても、同サイズの液晶・プラズマよりはるかに高い、となったらやっぱり普通の人は買わないでしょう。

Novalux社では2008年の北京オリンピックに照準を合わせて開発を急いでいるようですが、あと1年半でどこまでコストが下がるか注目です。まぁSonyの試作機を見る限り、有機ELよりはかなり市販が近いところを感じさせていますから、そこは期待できそうですけど。

逆にこの薄型SXRDリアプロが安く市販できたら、50インチ以上のプラズマテレビは完全に息の根を止められてしまうかもしれません。もしかしたらSEDも太刀打ちできないかも…

松下のプラズマの生みの親は「敗者はリアプロとCRT」と言っていますが、そんな悠長なこと言ってたらSonyとVictorに足元すくわれますよ。


nice!(8)  コメント(10)  トラックバック(0) 
共通テーマ:テレビ

nice! 8

コメント 10

Riever

ただランプ交換が不要なんだなと思っていましたが、これほどまでにすごいとは。レーザー、狙った波長の光をピンポイントで出せるのはすごいです。光学ブロックが無くなることで、さらに純度は上がりそうですし、SXRDの実力がフルに発揮されそうですね。

ただ、やはり高いのは事実。ここをいかに解決するかにかかっていますね。
QUALIA 006、そしてBRAVIA A2500を見た私、もう液晶へは戻れないので、頑張って欲しいです。
by Riever (2007-01-20 12:01) 

かつぽん

なんかね、素人考えだと、
レーザーだと目を射抜かれちゃいそうなσ(^◇^;)

んでも市販バージョンがほんとにココまで凄いのなら、
プラズマもSEDも敗者になっちゃいますね( ̄ー ̄)
by かつぽん (2007-01-20 14:36) 

Virgo

これ、画期的です。
ということは、A2500でも、充分薄くなったとは思いましたが、画面下端から下の機構部を収めるスペースすら更に極限まで薄く出来るってことですよね。液晶テレビ並に。
というか、機構部の配置自体に自由度が生まれるのかな?

唯一、そこが導入の妨げだったので、こうなると暫くHDMIがないのは我慢して、こいつの市販化待ちたいですね。

これでアンプのてこ入れ先に出来るかな〜。
貴重な情報ありがとうございました。
by Virgo (2007-01-20 17:57) 

Akihito(・。・)

これじゃあ価格以外は欠点が見当たらないです………
SEDはなんだったんだろう………と思っちゃいますね。
色再現性は右に出るものがいないですねえ(゜o゜)
あのスペクトルはさすがに冗談じゃないかと思いました。
by Akihito(・。・) (2007-01-21 01:04) 

gainer

最後に残るのは視野角じゃないですか?
奥行きや価格よりも重要な項目かと思います。
by gainer (2007-01-21 21:14) 

akoustam

>Rieverさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

レーザー光源はLED光源とならぶ、次世代プロジェクタ光源の本命です、これぐらいの性能は出て貰わないと。

しかしこういうの、いつも米国じゃないと見られないんですよね。有機EL含めてCEATECとかで日本人にも見せろよ、とか思うんです。いつまでたっても性能が確かめられなくて、評価しにくいです。
by akoustam (2007-01-22 23:13) 

akoustam

>かつぽんさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

みなさんどうしても「レーザー」って聞くと、強力な出力を持つタイプがイメージされてしまうんでしょうね。プロジェクタ用レーザーは集光してないですし、そんなに強い出力のモノではないですよ。
by akoustam (2007-01-22 23:21) 

akoustam

>Virgoさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

僕がA2500でなく、X2500に行った遠因の一つはこれにあります。フロントでもリアでも、プロジェクタを導入するなら次世代光源まで待とうと思ったのです。

とりあえず展示機を見る限りは、いわゆる「袴」も最大限小型化出来てる見たいですね。正面から見るとリアプロにはとても見えないデザインですよ。
by akoustam (2007-01-22 23:30) 

akoustam

>Akihito(・。・)さん
コメントありがとうございます。

僕も初めてこのスペクトル図を見たときは、その意味を理解するのに10秒ぐらいかかりました。で、意味が理解できたときには「これはとんでもないモノになるぞ」と思いました。

これをVPL-VW100の後継機に積んでくれれば、100万でも買っちゃうかもしれません。
by akoustam (2007-01-22 23:36) 

akoustam

>gainerさん
コメントありがとうございます。

う~ん視野角がそんなに重視されるなら、プラズマが大型機でここまで液晶に市場を侵食されるはずがないのですが…。

また一般消費者にとって奥行きが優先事項で無いなら、ブラウン管がこんなに急速に売れなくなるなんてことはなかったはずですし、奥行きや価格より視野角を重視する人なんてそれほどいるとは思えません。

普通の人にとっては、薄型で、ある程度の価格の製品が、店頭で「明るい画面で映像を映し出している」ことが重要なんでしょうね。

ちなみに今のリアプロでも左右視野角はほとんど問題になるレベルにありません。上下視野角はQUALIA 006のように上下方向のレンチキュラースクリーンを使えば改善しますが、ガラスが三枚になってしまうため莫大なコストがかかります。そこらへんは難しい問題ですね。
by akoustam (2007-01-22 23:51) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。