その情熱をシナバー・カラーに込めて。 [Sony・α]
既報の通り、Sonyのデジタル一眼レフカメラ「α」の第一弾、α100ことDSLR-A100がついに発表されました。
4月20日のブランド名発表以来、今か今かと待ち続けたSonyの一眼レフカメラですが、いざ出てみると「ボディ内蔵手ブレ補正機構」「アンチダスト機構」「1000万画素CCD」と、エントリークラスとは思えないハイスペックを持っているうえに、交換レンズは19本(うちカールツァイスT*レンズ3本)+テレコンバータ2本がラインナップされ、アクセサリも一通り揃っていてと、まさに「αシステム」と呼べる、強力な一眼レフカメラとしてスタートすることになりました。
去年夏のコニカミノルタとの提携と、年明けになって突如判明したコニカミノルタの撤退、そして旧αブランドの引き継ぎと、幾多の紆余曲折を経て(そこらへんの経緯は過去のエントリーをご覧下さい)誕生したSony α100が、いったいどんな実力を持っているのか見てみたいと思います。
1.すべてのαレンズで効果が得られるボディ内蔵CCDシフト方式手ブレ補正機能搭載
旧コニカミノルタがレンズ一体型デジタルカメラ用に開発し、α-7 DIGITALやα-Sweet DIGITALに搭載していた、CCDシフト式手ブレ補正機構「ANTI-SHAKE」が、Sonyのαにも搭載されることとなりました。
この「CCDシフト方式」は、Cyber-Shot T9/T30/H1/H5に搭載されている「レンズシフト式」と違い、カメラの揺れに反応し、光を受けるCCDユニットが上下左右に動くことで、手ブレを軽減します。
その最大の利点は、ほぼ全てのレンズで手ブレ補正機能が働くこと。CanonのEOSやNikonのDのように、「手ブレ補正機能付き」レンズ(CanonはIS、NikonはVRという型番が付くレンズ)を用意する必要がないのです。それは例えばミノルタの初代α-7000と同時に発売された、21年前のレンズでも手ブレ補正がきくということです。
プレスリリースによれば、今回のα100では揺れを検知するジャイロセンサーが新開発され、アルゴリズムもブラッシュアップされることで、コニカミノルタ機より強力に手ブレ補正がかかるようになっているようです。
僕もCyber-Shot T30(レンズシフト式)やHandycam HVR-A1J(電子式)で、Sonyの手ブレ補正プログラムの素性の良さを実感しているので、これはかなり期待出来ると思います。
すごく余計なことですが、この手ブレ補正機能、Sonyらしく「Super Steady Shot」って機能名になっているんですね。
でも手のアイコンは、コニカミノルタの「Anti-Shake」を受け継いでいるところが面白いです。
2.新開発有効1020万画素APS-CサイズCCDと新画像処理エンジン“Bionz”(ビオンズ)搭載で、臨場感のある美しい高画質を実現
撮像素子は世界一のSony、当然自前で新開発のCCDを搭載してきました。APS-Cサイズで1020万画素というスペックです。
NikonのD200が同じSony製のAPS-Cサイズで1020万画素ですが、微妙にスペックは違うようです。それ以上にD200はボディ実売20万円という中級機ですから、同じレベルのモノをエントリー機に持ってきたのはすごいですね。
そして画像処理を受け持つエンジン部も新開発。Cyber-Shotの“リアル・イメージング・プロセッサ”ではなく“Bionz”という名前が与えられました。
そのBionzの特長となる機能が「Dレンジオプティマイザー」。
撮影画像1200分割して高速サンプリングし、画像分析することで、ガンマカーブ、露出レベル、色、シャープネスなどのパラメーターを自動で補正してしまう機能だそうです。ただの露出補正と違い、画像全体の露出を変えるのではなく、領域ごとに適正な補正を行う「アドバンスモード」があります。
例えば逆光で人物を撮って、人物だけが露出アンダーの状態になった場合、背景の露出はそのままに、人物の部分だけ補正するなんてことをやってのけるようです。
これは「逆光は勝利!」な人(元ネタ誰かわかるのだろうか…)には余計な機能?(^^;)
3. CCDにゴミがつきにくいアンチダストシステム搭載
状況に応じてレンズを交換できるのが一眼レフの利点ですが、コンパクトカメラなんかと違って、レンズを交換するときに内部がむき出しになるので埃が侵入、撮像素子に付着して、撮影画像にゴミが写ってしまうということがありえます。
それを解消するために、超音波で埃を吹き飛ばす「ダストリダクションシステム」を付けたのは、オリンパスのEシリーズですが、α100も手ブレ補正のためにCCDを動かす機構を使って、埃を振り落とす「アンチダストシステム」を付けてきました。
そしてアンチダストシステムのメインとなるのが、埃を引き寄せる静電気を帯電しにくいLPF部の「アンチダストコーティング」。
これらはコニカミノルタ機には無かった機能で、CanonやNikonもまだ付けていないので、かなりのアドバンテージになるでしょう。
4. 約750コマのスタミナ性能
リチウムイオンバッテリの技術はSonyが得意とする部分。ただSonyファンにはおなじみのインフォリチウムではないのが残念。カタチとしてはインフォリチウムMそっくりですが、互換性は無いそうです。せめてチャージャーが流用できればなぁ、出来そうに見えるんだけど。
5. 2.5型“クリアフォト液晶プラス”搭載
これまたSonyのお得意分野。Cyber-Shotで続々と採用されている「2.5インチ23万画素クリアフォトプラス液晶」が付きます。
僕のT30は3.0インチ版ですが、このクリアフォトプラス液晶、明るくて、見やすくて、色再現もいいのでかなり使えます。一眼レフでもCyber-Shotのように液晶を利用して写真を見せ合うなんて事が定着するのでしょうか。
6. 高精度のオートフォーカスシステム搭載
ファインダーの下の部分にセンサーがあって、ユーザーが覗くと同時にAFがスタート、シャッターを半押ししなくてもピントが合う、「アイスタートAFシステム」があります。
また動いてる被写体に追随してピントを合わせ続ける「動体予測機能」も付いていますが、これミノルタの比較的初期のαから「コンティニュアスAF」という名前で付いていたのを思い出します。
AFセンサーには中央クロス9エリア8ラインのCCDラインセンサーを搭載。
Cyber-Shotは高速合焦が売りの一つですが、α100はどうなのか気になりますね。
その他ボディの特長としては、
・大きくて明るく見やすい光学ファインダー
視野率は95%。エントリー機としてはこんなもんですかね。EOS KISS DIGITAL NもNikon D70sも95%です。
・高精度の測光システムを搭載
画面を六角形のパターンで細かく分割して明るさを測る「40分割ハニカムパターン測光センサー」を搭載しています。
・「MS Duo Adapter for CF Slot」同梱
なんとビックリ、メモリースティックスロットを付けてきませんでした。CF-MS Duoアダプタが付属するという方式です。MS Duoも安くなってきましたし、CFとデュアルスロットでも良かったと思うんですが。
・最高約3コマ/秒の連写
連写速度もそうですが、JPEGならメモリの許す限り連写し続けることができるのがすごいですね。
ここまでα100のボディを見てきましたが、ボディ単体で10万円というエントリー機とは思えない高機能機になっているのがわかります。
ライバルはズバリ何度も出ている、EOS KISS DIGITAL NとNikon D70s(どちらもボディ単体9万円)ですが、1万円高いだけで、1ランク上のEOS 30DやNikon D200に迫る機能もあるなど、かなり競争力の高いマシンになっていると思います。
あとはカメラで大事なシャッターのフィーリングや、スイッチの感触全体の質感といったところが、どんなものなのかにかかっていますが、これがマニアもカメラ愛好家も納得の出来なら、本当にお勧めの一眼レフカメラになるかもしれません。
そして一眼レフカメラで重要なのは、なんといっても交換レンズ。次は同時発表されたレンズを見ていきましょう。
事前の予告通り、初年度で20本以上のレンズ群を用意してきたわけですが、正確には新開発なのはカールツァイスブランドの三本だけ。あとのレンズは、もともとコニカミノルタがα用に販売していたレンズを、Sonyブランドとして外装をいじったものになっています。
しかしカメラ事業撤退で、コニカミノルタの新品αレンズは手に入りにくい状態になっており、こういうカタチで継続販売されることになったのは、旧αユーザーも大喜びではないでしょうか。
さて撤退前に売っていたコニカミノルタのαレンズのラインアップは、ここに書いてあるのですが、これを見ながら比較していくとなかなか面白い傾向が見えてきます。
まずSonyが引き継がなかったレンズ。
・AF85mmF1.4G(D)
コニカミノルタの高級レンズを示す「Gレンズ」の中で、ポートレート・レンズというジャンルに相当する単焦点レンズです。どうやらカールツァイスレンズに、同じ85mmF1.4単焦点があるので引き継がなかったと思われますが、よ~くスペックをみると、レンズ構成からフィルター径からそっくり。
もしかしてあのカールツァイスレンズは、このGレンズをカールツァイスブランドを名乗れるように改良したものなのでしょうか。
・ハイスピードAFアポテレ600mmF4G
これはプロ向けの超望遠単焦点なので、出す必要は無いという判断でしょうね。
・AFマクロズーム3x-1x F1.7-2.8
数少ないボディの手ブレ補正がきかないレンズの一つです。これも相当特殊なレンズなので引き継ぐ必要なしということなんでしょう。
・AF24mm F2.8 NEW
撮像素子サイズがAPS-Cのカメラでは、35mm換算にすると焦点距離は×1.5ですから36mmのレンズと同等と言うことになります。広角気味の標準単焦点はこれしか選択肢がないので、これは引き継いで欲しかったレンズですね。もしかして新開発中?
・AF50mm F1.7
これはF1.4があるからいらない、ということですかね。どうせなら軽量なパンケーキレンズとか開発して欲しいんですが。
・AFズーム17-35mmF2.8-4(D)
・AFズーム28-75mmF2.8(D)
・AFズーム28-100mmF3.5-5.6(D)
この三つは、デジタル一眼専用DTレンズと、新開発のカールツァイスレンズで同じレンジを賄えるから、ということでしょうね。
・AFアポテレズーム100-300mmF4.5-5.6(D)
これも75mm-300mmF4.5-5.6があるからでしょうね。
逆に復活したレンズ。
・35mm F1.4G
このレンズ、まだコニカミノルタが撤退を決める前に開発表明していた明るいGレンズです。本来この春にでる予定だったのですが、Sonyが開発を引き継いで10月に出すことになったようです。明るい標準単焦点となるとこれだけになるので、かなり高額ですが一本持っておきたいレンズですね。
・STF135mm F2.8[T4.5]
このSTFレンズ、実は撤退よりかなり前にディスコン(生産終了)になっていて、手に入りにくい状況にありました。それが今回Sonyブランドで復活。今までのαユーザーも使えるので、探していたユーザーさんは嬉しいでしょうね。
ちなみにSTFとは「スムース・トランス・フォーカス」の略。特殊なレンズで綺麗な円形ボケがでるので、ボケを活かした写真を撮りたい人には、非常に魅力的なレンズです。しかしコニミノ時代に比べてえらい値上げされたなぁ。
そして今回の目玉、新開発のαマウントのカールツァイスT*レンズです。
・Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA
まずはデジタル専用Vario-Sonnerですね。ガラスモールド非球面レンズを2枚使用するなど、さすが高級レンズって感じです。残念ながらフィルムαユーザーは使えないレンズですが、αマウントのカールツァイスってなんかすごい時代になったなぁと思ってしまいます。
・Planar T* 85mm F1.4 ZA
前述したとおりこれが新開発なのかは、ちょっと微妙なのですが、どっちにしてもF1.4という明るいポートレート・レンズとして、かなり使いがいのあるレンズになりそうです。しかし高い…。
・Sonnar T* 135mm F1.8 ZA
Sonnarの望遠単焦点ですが、ED(特殊低分散)ガラス2枚を使用するなど、これまた金かかったレンズになっています。
上記二本はデジタル専用ではないので、フィルムαのユーザーでも使うことが出来ます。古くからのαファンの方は、まさかαにカールツァイスブランドのレンズが出るなんて、想像もしてなかったでしょうね。
とりあえずはこの三本がカールツァイスブランドで出てきたわけですが、これからまたどんどん増やして欲しいですね。ディスタゴンの広角レンズとか、テッサーで重量の軽い標準レンズとか、まだまだ出す余地はあると思うので。
フラッシュなどその他アクセサリは、ほぼ全てがコニカミノルタからの継続となっているようです。一つ面白いのは、Sony αのイメージカラーであるオレンジ色をしたストラップ。なんか「SONYのαだぞ」って誇らしげですね。
以上駆け足で、α100を見てきましたが、これはまだ始まりにすぎません。これからシステムとしての「α」構築のために、もっと上のクラスのボディや、多彩なレンズ・アクセサリが出てくるのは間違いないでしょう。
今の時点での弱点は、ちと交換レンズが全体的にいいお値段になっちゃってることと、早いことボディのバリエーションを揃えて欲しいと言うところでしょうか。
それにしても電器メーカーであるSonyが、コニカミノルタの後継としてとはいえ、いきなりこれだけ充実した一眼レフを出してくるとは、ライバルとなるカメラメーカーもさすがに予想外だったのではないでしょうか。
特にNikonあたりにとって、Sonyは最新のCCDを納入してくれるパートナーだったはずなのに、これからは片手で握手しながら、片手で殴り合う関係になり、新開発の撮像素子はまずSonyの一眼に搭載されてそのあとに、なんてことになりかねません。
これはかなり不利な競争をすることになると思われます。
また松下電器もデジタル一眼参入を目指していますが、お得意の「光学手ブレ補正」は、レンズ内蔵型のため搭載レンズが限られ、ボディ内蔵式のSonyの方が、レンズはたくさんある上に全部手ブレ補正対応ということになり、このままでは折角の優位点が霞んで見えてしまいます。
こうなるとオリンパスと松下共同で、新レンズの開発ペースをあげていかないといけないかもしれません。
というようにSonyのαは新規参入にもかかわらず、強烈な存在感と競争力を持つカメラとして船出することが出来ました。これから先、このアドバンテージを活かして、どんなすごいカメラが出てくるのか非常に楽しみです。
レンズマウント部に配された、イメージカラーである「シナバーカラー(辰砂色)」のリング。
このオレンジのリングから、これからどんなカメラが、そしてどんな写真が生み出されるのか、長い伝統を受け継ぎながら、無限の未来と可能性を持ったαの誕生に、今日は心よりおめでとうと言っておきましょう。
ハイテク嗜好品の解説から、地の果てでのサバイバルまでこなすakoustamさん、す~ごいです。感嘆。
by Soul_Flower (2006-06-07 06:34)
CCDはこの1020万画素の下は、D70(s)/D50搭載の640万画素まで下がってしまうんですよね。
800万画素クラスが存在していれば良かったのですが、新開発するよりは内製パーツのメリットを生かして1020万画素のCCDを選択したんでしょうね。
アンチシェイク、確かにSONY版αだと今回の21本全てで手ぶれ補正が効くんです。
でも、T*レンズを旧αに付けると手ぶれ補正なんて何ですか?なんですよね。
このあたりは考え方の違いですが、旧ボディユーザーは複雑な気分?
by arkstar (2006-06-07 09:14)
一眼レフカメラは一度も所有したことのない私としては、今回の製品の位置付けとか過去の経緯(Sonyがコニカミノルタカメラ事業を継承だけは存知あげてましたが)を知らなかったので、記事内容に感謝といゆうか参考になりました。
ただハッキリしていることは、新参者のSonyが、老舗ブランドに脅威を与える製品いきなり出してきたってことになるわけですね。
また私レベルだと入門用のこのα100が他社製品とのベンチマークになるわですね。
by (2006-06-07 09:48)
このレンズを外した状態がカッコイイですね。
(つけた状態はカッコイイとは思わないんですが・・) (^_^;)
そういえば、前の記事のお話で、パナソニックの一眼はどうしちゃったの
でしょう? 全く話題に出てこなくなっちゃいましたね。
今回のαの予想外の出来の良さに、パナソニックは燃えますかね?笑
なんかそのまま終わっちゃいそうな雰囲気があるんですけど・・
by はまちゃん (2006-06-08 00:49)
>Soul_Flowerさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。
あはは、自転車旅行とSonyぐらいしか好きなことありませんから、結局こうなっちゃいますね。もっと色々と挑戦できる人生にしたいもんです。
by akoustam (2006-06-08 14:29)
>arkstarさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。
そこらへんは思想の違いでしょうね。
僕はカメラのボディとレンズなら、レンズのほうがはるかに商品寿命が長いと思うので、コニミノやSonyの「手ブレが欲しけりゃボディを買い換えてね。そのかわりレンズは今までのでいいから。」っていう姿勢は評価高いですね。
by akoustam (2006-06-08 14:34)
>シマリスさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。
カメラメーカーにとってはかなりの脅威でしょう。カメラの歴史はあっても、デジタル技術に弱点があったコニミノと、カメラの経験は薄いがデジタル技術世界トップクラスのSonyがくっついちゃったんですから。
製品的にはα Sweet DIGITAL IIといっていい内容ですが、他社の10万円弱のエントリークラスと比べると、かなりのアドバンテージがあるので、α100を基準にしてカメラ探しをすると、かなりいい製品が買えると思います。
by akoustam (2006-06-08 14:39)
>はまちゃん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。
ちょっとレンズがのっぺりしすぎているんですよね。もっとメカメカしいデザインだったら、レンズつけた状態でもかっこいいと思うんですけど。
Panasonicは最終調整に相当手間取っているみたいですね。ただ正攻法で真正面から挑むαと違って、LUMIX L1ちょっと変化球くさいので、二社が直接ぶつかる可能性は低そうです。ていうか同じく変化球気味のオリンパスと食い合いにならないように気をつけたほうが…>パナ
by akoustam (2006-06-08 14:45)